2007-02-18

"ウォール街のランダム・ウォーカー" Burton G. Malkiel 著

ランダム・ウォークとは、物事の過去の動きからは将来の動きや方向性を予測することは不可能であるという意味である。
この言葉は、ウォール街では専門家が猿と同列にされるとして忌み嫌われているそうである。
本書は二大陣営であるファンダメンタルズ分析派とテクニカル分析派の死闘に古典的論争を加えているところがおもしろい。テクニカル分析派は、砂上の桜閣学派として群集心理の原理を重視する行動ファイナンス理論であり、ケインズの美人投票論であると酷評している。

おいらはファンダメンタルズ分析を支持する立場をとりたい。なぜならば、性格的にどんくさいのでのんびりと構えたいのと、市場原理は群集心理の影響を受ける複雑系ではあるものの、基本は重力物理学であると信じているのである。
しかし、これだけテクニカル派を下げ降ろすといくらファインダメンタルズ原理主義者のおいらだって逆に興味を持つのである。
ファンダメンタルズ派にしても、将来予測という不確定要素を拠り所にしており、そもそも分析対象とした公表データの信憑性も疑わしいのである。
テクニカル分析派が多く存在するということは、その影響で市場が動かされるのも事実であり、無視できないのである。また、本書は企業の将来予測も不可能と言っている。このような矛盾の中でリスク管理と資産運営を考えることが、アル中ハイマーの目的である。

テクニカル分析について。。。
「人間の性は秩序を好む。ランダムという概念を認めるのは難しい。ランダムな事象の中からパターンを見つけ出そうと努めるものである。」
スポーツではバスケットのシュート成功率の連続性などを例にしている。コイン投げでも表の出る事象が連続することは多々ある。これらがプロのファンドマネージャの実体であると酷評している。同時にアノマリー学派も攻撃している。アノマリーも皆が気づけば旨味は廃れる。
アル中ハイマー流に表現すると、2人でジャンケンして勝ったもの同士が更にジャンケンしていく。このようにトーナメントを行っていき必ず最後には勝ち続ける人がいる。そいつをカリスマ・ジャンケン家と崇めるマスコミがいるということなのである。

ファンダメンタルズ分析について。。。
「専門家である証券アナリストでも、企業の利益予測など当てられるものではない。ハイテク業界のような将来予測が難しい業種であろうが公益産業であろうが同じことで、素人の個人投資家と大して変わらない。」
これは株式の世界に限ったことではない。素人でも専門家を出し抜ける業界は多々ある。多くの証券アナリストは、特に明敏でも、批判力があるわけでも、有能でもない。と言い切っている。確かに、おいらの業界でも、素人で向上心のある方がマシと思わされる人材はごろごろしている。また、証券会社はマスコミとつるんで、手数料目当てで必ず強気相場を演出し買いを推奨する。証券アナリストが売りを推奨してるところなど見たことがないのである。スポンサーに機嫌をとらなければならない。裏の政治が絡んで論ずる連中が到底プロだとは思えないのである。

ランダム・フォーク理論によれば、過去の経験から未来予測はできないと語っている。
「既に公開された情報を元に銘柄を選んでも平均以上のパフォーマンスは得られない。最近の情報インフラの発達により、素人でもプロ並の知識は得られる。よって、公開情報は既に株価に織り込まれ済みなので、ファンダメンタルズの旨味も消えて行くであろう。また、リスクに着目した国際分散投資もグローバル化の波で旨味が消えるだろう。企業価値を判断することの困難さは並大抵のことではない。」
行き着くところは、インデックスファンドの長期保有ということか。ピーター・リンチ、ベンジャミン・グレアム、ウォーレン・バフェットも同じ結論に達したようである。長期保有とは、だいたい25年とみているようだ。おいらが年金生活を必要とするまで、だいたい同じぐらいの期間だ。ちょうど独自のポートフォリオを構築せねばならない時期にきているのである。

本書は長期的には効率的市場理論を支持する立場をとっているが、全体としては中間的立場をとりたいと言っている。効率的市場理論を無視するまでの心の準備ができていない。という自信のないコメントもある。
尚、本書の舞台は米国市場である。いずれ日本市場も米国市場に近づいていくのであろうが、果たして日本でも同じ思想が使えるのだろうか?やはり国際的な分散運営が必要なのかもしれない。語学力がないおいらは勉強しなければならない事項がまたまた増えるのである。
さて、本題である資産運営をどうするか?資産配分をどうするか?一部を土地などの固定資産、一部を事業資産、一部を流動資産に、さて割合は?債権と株式の割合は?
本書では、個々のリスク許容度で戦略が異なってくることを指摘している。当然である。しかし、効率的市場理論の存在が前提である。読み終わって、いまだに経済は重力物理学であると信じたい。

著者はインデックス・ファンド大手の社外取締役でもあるせいか、本書で上げられている数々のデータは、実は宣伝用にも見える。しかし、共感できる点は多いので、騙されてみるのも悪くないと思うのである。おいらはインデックス銘柄のポートフォリオを独自に構築することを研究するのである。おいらは財務諸表を読んだり、会社分析をするのがそれほど嫌いではない。市場分析には、経営とマーケッティングの勉強も欠かせないのである。

本書は個人投資家に対する株式投資の入門書という位置付けであるが、おいらにとっては資産運営の参考書である。人間は欲望を捨てることができない。いかに理性を持って資産運営をするかは非常に難しい。効率的市場原理が成り立つという前提で話が進むが、実際は人間の欲望でランダムフォークさせられる。考えたくないが、効率的市場原理の前提が崩れているとしたら。会社選びも年金期待も全てギャンブル。どうせギャンブル人生なら自己責任を楽しむのである。こうして、アル中ハイマーは人生の墓場へとランダム・ウォークするのである。

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