雑に作る... とは、技術屋の間ではタブーとされる。
しかしながら、真理ってやつは、逆説によって語られるところがある。
本書は、電子工作を DIY 感覚で愛でる指南書。雑も、無駄も、役に立たないことも、逆手に取れば人生の教訓となる。そこで、雑に生きる... と読み替える。要は、作ることも、生きることも、楽しむこと。モノ作りの原点は素朴な好奇心にあり!と言いたいところだが、脂ぎったオヤジにそんな純真さもどこへやら...
雑に... というのは、何かを始める時にハードルを下げてくれる。では、どのくらいハードルを下げるか。それにはまず、自分自身の能力を知ること。自己を知ること。気楽に始め、完成度には目をつぶり、次々に駄作をこしらえる。これぞ雑の極意というものか...
本書ではまず、雑に使えるマイコンボードが紹介される。Arduino ってやつだ。これのサンプルコードを使い回すことで、プログラミング言語の勉強という面倒な工程を吹っ飛ばす。幸いなことにネット空間には、ソースコードや体験談を公開してくれる多くのボランティアの方々もおられる...
「サンプルコードは神からの贈り物!」
とりあえず遊べる部品では、サーボモータ、リードスイッチ、チルトスイッチ、CdS セル、LED といったものが紹介される。初めて作るものは、目に見えて動くものがいい。サーボモータは昔からの定番か。速度やトルクなどが制御でき、プログラミングできる教材用キットも出回っている。まずは、カット & トライ!
「失敗した後に読む注意書きは 3 倍わかる!」
部品調達もワクワクする工程の一つ。ここでは想像を膨らませ、百均にまで足を運ぶ。百均はアイデアの宝庫。おいらも気分転換によく立ち寄るが、つい無駄遣い。御用心!御用心!
「買い物しながら脳内設計!」
ただ、おいらの場合、雑にやるつもりがなくても、雑になってしまう。それでも、なにかしら知識を得、その都度アレンジしたくもなる。雑と自由は相性が良い。
雑に... もいいが、我武者羅に... というのもなかなか。難しいことでも、楽しいことがある。例えば、ファインマン物理学なんぞは難解でありながら、なぜか楽しめる。我武者羅にやっているうちに、突然視界が開けた時の景色は爽快!
「世の中には、"インプットしないとアウトプットできない" という信仰のようなものがある。たくさん本を読まないといい文章が書けないとか、たくさん音楽を聴かないとよい曲は作れないとか。技術も同じで、どんどん新しいことを覚えていかなければよい作品が作れないと考える人も多い。それが真実である場面もあるけど、工作においてはそれがすべてではないと僕は思っている。新しい技術を覚えることはいいことだけど、それ以上に手を動かしてアウトプットするのもいいことなのだ。特に私たちのような "雑に作る" 一派には、どんどん手を動かして、技術は後からついてくるのを待つ、そんな作戦もあるのだ。」
ちなみに、著者の石川大樹氏は、技術力の低い人限定ロボコン、通称「ヘボコン」というイベントを主宰しているそうな。その信条は... ハプニングは醍醐味!、勝者は恥じよ、敗者こそ誇れ!、すべての失敗は美しい!、人のヘボを讃えよ!、そして楽しめ!... ということらしい。テクノロジーの民主化運動とくれば、雑にも慈愛を...
ところで、この手の書に触れると、消えかけていた記憶が蘇り、ついお喋りに... 老害癖は如何ともしがたい!
実験室では、測定器の補助的なキットを自作したものである。
例えば、振幅や周波数、あるいはデューティ比を制御できる発振回路、モノマルチを使った簡易的な信号発生器やピーク検出器、ビット誤り率を計測するカウンタ回路など。
現在は、チップに統計情報のモニタ機能が組み込まれたり、システムが自己完結する傾向にあるので、そんな手間も無用であろうけど。
また、オペアンプは様々な用途に使える便利な素子。その構造すら理解できず、参考書を見様見真似で。あるいは、理論は単純でも実用レベルとなると、先輩たちに職人芸を魅せつけられたものである。
システムの省電力化が進み、入力インピーダンスが高くなると、些細な静電気にも気を配る。それで幾度、過電圧や過電流で素子を壊したことか。
デジタルシステムでは、悪名高いスイッチングノイズがつきまとう。こいつとの葛藤で、幾度徹夜したことか。
システムが複雑化すれば、電源シーケンスにも気を配る。ラッチアップで煙を出し、やっと自らの悪行に気づく有り様。
... などなど、失敗談に事欠かない。
「初心者が思いがけず怒られるときは、だいたい『安全』、『法律』、『リスペクトがない』の 3 つのうちのどれかが原因のことが多い。」

