アマゾンを放浪していると推薦図書にツルゲーネフがあった。トルストイを読んだからである。そういえば学生時代、文系の先生に理系の人間はトルストイは読んでもツルゲーネフは読まないだろうと馬鹿にされたのを思い出したのである。悔しいので読んでみることにした。アル中ハイマーは根に持つのである。
本書は、虚無主義者「ニヒリスト」である主人公を描写したものである。
ニヒリストとは本文を引用すると、
「何事にも批判的見地から見る人間。いかなる原理も、たとえその原理が人々にどんなに尊敬されているものであっても、そのまま信条として受け入れない人。」とある。
本書は時代背景から理解してないと分かりづらいので少し触れてみよう。
父の世代とは、1840年頃のニコライ一世の反動政治の暗黒時代。自由主義は専制政治により弾圧されていた。子の世代とは、1850年頃のアレクサンドル二世。国民精神が高揚した時代。父の時代の無気力を恥じ敢然と行動する。そして、1860年代は世代の分裂が顕著になる。農奴廃止運動が高まったのもこの頃である。知識階級で貴族階級と雑階級の不和を生む。社会思想と個人思想が対立する。そしてニヒリズムは個人思想に属する。この時代の描写に雑階級出身、つまり何も失うものがない無産階級の知識人のエネルギーが必要であるとして主人公を創造していると解説されている。本物語は、このようなロシアの一時代を背景にして、世代間の思想的対立が展開されていく。
いつの時代でも親の世代と子の世代の対立はある。
おいらは親の言うことを聞きたくないので、家庭では気まずい雰囲気が漂っている。しかし、本書を読んでいると父の世代にも少々同情する立場をとってしまう。というのも、人間というものは自分の生きた時代を否定されると自分自身の存在そのものを否定された気がするからである。すると自尊心は傷つけられ防衛的態度を取ってしまう。自分の存在意義を示し頑固親父となるのである。実際は、どんなすばらしい人間でも存在しなくなったからといって一部の人間が悲しむものの、世の中が変わるものでもない。しかし、無能な人間ほど出しゃばって混乱させているのも事実である。アル中ハイマーは皆さんの仕事ぶりを邪魔しないように心がけ細々と生きることを目標にしているのである。
少し余談になるが、おいらはずっと知的障害者を観察してきている。慣れているせいか?あまり同情的な目で見ることはない。障害はかなり重度なので言葉が話せない。生活は周りが面倒を見ているので、仕事などの義務は無いし、圧力があるわけでもない。心配事など無縁に思える。順風満帆に生きているようにさえ見える。かつて代わってほしいと思うことすらあったのである。
しかし、自閉症やら、不眠症やら、突然発狂したり、深夜に踊りだしたり、次々と変わった症状が複合的に表れる。物事を行う時は、いつも呪文を唱えながらヨガでも踊るかのごとく、まるで儀式のようにある決まった行動パターンを見せてから始める。
何を考えているのだろうか?常識では量れない何か不安な事でもあるのだろうか?何かに必死に耐えているように感じるのである。
こういう症状を見ていると、人間は何も目的がなくなるとどうなるのだろうか?などと考え、妙にに虚しくなることがある。これも一種の虚無主義かもしれない。
そう言えば、政治や企業などあらゆる組織において、統制するための規則を作り決まった儀式を行う習性がある。その理由を聞くと"伝統"という言葉で片付けられる。
人間というものは、不安や悩みから逃れるために、一定の儀式が必要なのかもしれない。ある決まった行動パターンに嵌め込むと精神的に落ち着くのかもしれない。不安を感じる人ほどルール化して自分をあるいは他人を束縛したがるのかもしれない。
おいらも独立して定期的に得られる給料が無くなったせいか?何か忙しくしてないと落ち着かない。そこで毎日、自己啓発で必ずやることを決めている。こんな不精な人間がよく続いていると自分でも感心するのである。
どこかに不安を背負っているのだろうか?全く自覚症状はない。だからと言って悩む必要もない。そもそも、アル中ハイマーは、人間分析には使えないのである。
さて、前置きはこのぐらいにして本題に入ろう。
「アル中ハイマーの虚無についての考察」
とある情報筋によると、こんな行動パターンがあると報告されている。
・夕方5時から開店するバーを無理やり4時から開けさせる。
・飲み会の幹事であるにも関わらず、先に数件、はしごしてから現れる。
・彼の待ち合わせ場所は、必ず飲み屋である。
これは、かなり人生の虚しさを感じていると言わざるをえない。
そして、ぼやくのだ。"昔は理性の固まりと言われていたのに、こんな人間に誰がした!"
こうして、あらゆる事を人のせいにして、何事にも批判的な見地に立つのである。これは、アル中ハイマーがニヒリストであるという証明なのである。
ちなみに、ニヒリストは国際交流も盛んなのだ。スコッチ系、アイランド系、シェリー系などなど。
2007-02-04
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