2007-06-24

"人を動かす「韓非子」の帝王学" 中島孝志 著

昨日は久しぶりにカート三昧である。土砂降りの中、10ヒート以上は走っただろう。路面は超ウェットだが、もちろんタイヤはスリック、気分はドライである。アル中ハイマーはウェットが得意である。だが思ったようにタイムが出せない。久しぶりとはいえ平凡なタイムではフラストレーションがたまる。近いうちにリベンジだ。とりあえずドライマティーニでリベンジしよう。
今日は腕の付け根と背中が痛い。腕はアンダーステアなのでキーを叩くのがしんどい。よって、本日のブログネタは簡単に処理できるものを選びたい。

本書は、ハードカバーの単行本で200ページ超あるが、字は大きく隙間も大きい。いかにも年寄り向きの作りで、最近小さい字を読むのが億劫なアル中ハイマーにはありがたい。
また、構成は各章とも、1. 原文をくだいた文章、2. 原文っぽい古文風、3. 解説、と、内容が3回繰り返されているので実質読む量も少ない。よって一気に読めるので手軽である。たまにはこういう本をネタにしないと息切れしてしまう。

本書は、一言で言うと、"人をマネジメントするには、人間通になれ!"ということだろう。宣伝文句には、「人を思いのまま動かす悪のノウハウ満載」とある。なんとなくアル中ハイマーが喰いつきそうなフレーズである。ただ、マネジメントの失敗続きで、なぜうまくいかないのかという解を、本書に求めても無駄だろう。人を動かすとは、そう簡単なものではない。ハウツウものにできるほど体系化できるものではないのだ。そもそも本から教訓を得て実践してもぎこちないだけである。優れたリーダーは自然と振舞うものである。むしろ、本書を読んでうまくいく人は元々人間掌握の資質がある人だろう。または、そこそこうまく振舞っている人間が自己確認のために読むのにおもしろいだろう。普段の人間性こそ重視すべきである。アル中ハイマーは、あらためて人の上に立つことの難しさを感じさせられるのである。

1. 独裁者。
本書では、善いリーダー像の対極的な人間像として独裁者をいたるところに鏤めている。独裁者やワンマン経営者の組織では秩序がなく、その場でころころと指針を変える。こうした組織では、リーダー1人の心中を推し量ることだけが幹部の仕事である。上り坂では直感が当たりカリスマと崇められるが、下り坂では地獄へ真っ逆さま。資金力もなく総合力に劣る組織が、ライバルに挑むにはゲリラ戦に持ち込む。こうした状況では、一人一人の人材パワーに負うところが大きいにも関わらず、無視するリーダが多い。リーダーがワンマンであればあるほど、その周りにはイエスマンばかりはびこる。本書は、特に日本の企業社会はイエスマンが増殖しやすい傾向にあるという。過度の忖度社会を指摘している。それはそれで良い面もあるのだが一理ある。ただ、理不尽なことまで押し付けられるのは、忖度ではなく脅迫である。これを過度の忖度と表現しているのだろう。理不尽に対抗する人ほと去っていく。そういう人ほど戦力であり他社でも通用するから、なおさらである。よほど気を引き締めないと裸の王様になる。会議ではワンマンショー!偉い方は部下が馬鹿に見えてしょうがないのだろう。

2. 人気と人望は違う。
「いくら部下が優秀であっても、年上であっても、彼らが"さすがだ"と一目置くものを指導者は持たなければならない。だからといって全ての能力が部下を凌駕する必要はない。1つか2つでよい。その最低限、熱意は必要である。自分以上の集団の中でリーダーシップを発揮するには人望がなければならない。人望のある人物は損得では動かない。」
酔っ払いも負けじと主張するのだ。人を褒めることは、人を叱ることができる人の権利である。人を雇うことは、人を首にする勇気を持った人の権利である。可哀想だからといってやたら仕事を受けたり、人を受け入れたりすると破綻する。責任を負わされた先任から去っていく。

また、かつて功労があったからといって、その礼に人事をするととんでもないことになると語られる。功には碌で報いて、地位、ポジションで報いるものではないという。褒めることは簡単だが、叱るのは難しい。更に難しいのは人を切ることである。更に難しいのは自分を抜擢してくれた恩人に対するリストラである。歴史の長い上場企業や伝統企業にはびこる老害はすべてここに原因がある。功績のある会長や相談役というポジションに居座る人物を解任できない理由がここにあると指摘している。

3. 部下の一生は最初の上司で決まる。
「一人目の上司で7割が決まり、二人目の上司で9割が決まる。本人が切り開くのは1割しかない。」
これは、思いっきり反論したくなる。あまりにも他力本願過ぎるからだ。本書が言いたいのは、それだけ心して新人を育てよ!という意味だろう。また、こうも述べている。
「新人教育で重要なのは仕事のスキルやノウハウではない。取り組み姿勢。心の部分。価値観である。スキルやノウハウはリーダよりも優れた人材は多くいるし、本人の勉強意欲でも対応できる。重要なのは、いつの時代でも価値観である。」
なるほど、これならば反論する気持ちが静まってしまう。あるバーテンダーのジントニックを無理やり飲まされた後に、店長のサイドカーを食らった気分である。
アル中ハイマーは先輩に恵まれている。いつも厳しい先輩が、おいらが大失敗した時、怒られると思ったら妙に寛大だった。余計に失敗を恥じたものである。また、別の先輩は、「初めてやった技術だから失敗した。なんてのはプロの台詞じゃない!」と言った瞬間は、かっこええと思ったものだ。馬鹿なおいらを根気強く論文の指導をしてくれた大先輩。もちろん夜の社交場も、手取り足取りと。それぞれ分野別に恵まれたものである。恩返しで後輩の育成に務めなければならないのだが、なにしろ短気が災いして、数多い優秀な人材の芽をつんできたことだろう。福沢諭吉曰く。「実学とは一流の人と出会うことである。」同感である。

4. モルトケ
本書は、世界最高の軍師と歴史上名高い、プロシア国の参謀モルトケを紹介している。一番の要職に就ける人材とは、能力が高くて欲のない人間。無益な欲得にとらわれないで課題を突破することに知恵を絞るので、リーダにうってつけというわけだ。二番目は、能力もないし、欲もない人間。こういう人は人畜無害。三番目は、能力も欲もある人間。しかしリーダには向かない。特に、この手の人間は周りの人間が馬鹿に見えるから自信過剰で人の意見を聞かない。更に、いったんポストを与えると独断専行しがちである。最も悪い人事は、能力がないのに出世意欲だけは異常に強い。これ以上、組織にとって人畜有害なものはないだろう。

5. 本書は、本音をやたら表に出すものではないという。
相手の様子を伺いながら、人を説得するには相手の目線にあわせることであると述べている。まったく、その通りである。しかし、とっとと本音をぶつけないと会議が早く終わらない。アル中ハイマーは長時間の会議が大嫌いである。1時間が限界である。交渉は肩が凝る。そもそも相手を説得しようとは思わない。本音をぶつけて合意できなければ無理に交渉を進めることはない。金儲けをしたければ、あらゆる仕事に手を出せば良いが長続きする気がしない。重要なのは長続きさせることである。しばしば本音を利用され損をすることもある。それはそれで良い。どうせ、それっきりの付き合いである。この点は、アル中ハイマーは頑固おやじである。よって評判も悪い。しかし、この一本気で強がっている酔っ払いは、ただ能力がなくて何もできないことを隠しているに過ぎない。

6. 最終的には人徳かなあ。
結局、人間掌握するには誤魔化しはきかない。人徳が重要ということになりそうだ。本書でも、数箇所に人徳という言葉が登場する。そう言えば、おいらは会話で人徳という言葉を使ったことがない。
人徳を持った人は言うだろう。「私は人徳を持っていない。」
人徳を持っていない人は言うだろう。「人徳とは。。。こういうものだ。」こうして説教が始まる。
アル中ハイマーは言うだろう。「人徳って焼酎の銘柄かい?」
おいらがこの言葉で唯一思い出せるのは戦国シミュレーションゲームで、武将のパラメータに人徳度というのがある。この数字が高いとゲームを有利に展開できるので、なんとなくすげーものだという意識がある。その数字を高めるには官爵を得ることである。どうやら地位と名誉に比例するものらしい。なんとなく本書とは違うもののようだ。
やっぱりアル中ハイマーには、人徳という幻の焼酎を探してさまよう方がお似合いである。ということで、秋は酒蔵めぐりの旅を計画することにしよう。

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