2008-04-06

"オイラー入門" William Dunham 著

入門ということで立ち読みで済まそうと思ったのだが、アル中ハイマーの頭脳では無理である。それに、本書は是非とも手元に置いておきたい。こういう本を読むと、学生時代に挫折した数学に再チャレンジしてみたくなるから困ったものだ。どうせ、またアホを自覚するだけなのに。

本書は言うまでもなく数学の巨匠レオンハルト・オイラーについてのものである。オイラーの功績はあまりにも広大なため、こうした本で紹介するのにも限界があるだろう。著者は、オイラーの功績で無視している部分が大きいことを認め、特に、応用数学に関するものを省いていることを詫びている。人類は論理で武装して、誰が見ても明晰な世界を説明しようと奮闘してきた。しかし、その発端は天才たちの直観に頼るところが大きい。本書は、そうしたオイラーの直観的な部分もさらけ出す。また、フーリエ級数、ベッセル関数、ヴェン図といったものは、むしろ、オイラー級数、オイラー関数、オイラー図と呼ぶ方がふさわしいと語る。しかし、そんなことでオイラーの偉大さは微動だにしない。
オイラーは、バーゼル大学でヨハン・ベルヌーイから数学の手ほどきを受けている。サンクト・ペテルブルグのアカデミーでは「バーゼル問題」を解決して有名になる。ここで、なぜロシアなのか不思議でもあるが、時代背景から推察すると、ピョートル大帝時代、ヨーロッパ諸国でも遅れて近代化に乗り出したロシアは、教育問題を抱えていた。ピョートル大帝は、積極的にヨーロッパの科学や文化を持ち込み交流したことでも知られる。新しい首都サンクト・ペテルブルグでアカデミーを設立し、多くの外国人学者を迎えている。その中に、ヨハンの息子ニコラスとダニエルのベルヌーイ兄弟もいる。
オイラーは視力の衰退という身体上の問題を抱えていたという。30歳ぐらいで右目を失明し、60代でほぼ全盲になる。だが、それからの膨大な研究成果には驚嘆させられる。

オイラーといえば、複素解析に重要な指数関数と三角関数の関係を示したことが思い浮かぶ。この数学の道具は、急激に増大し発散する世界を、振動する閉じた世界に変えてしまう。そのお陰で、ホーキングは、虚時間という概念を持ち出し、宇宙の境界線まで無くしてしまった。アルコールのピッチが上がれば上がるほど、同じ台詞を繰り返してホットな女性を口説くという現象もオイラーの公式によって説明がつく。夜の社交場へとまっすぐに向かう足取り(クリティカル・ライン)は、いつのまにか例の店(零点)にいる。店を出て、更にまっすぐ歩くと、またまた例の店(零点)に辿り着く。この現象は、実(実数部)は1/2しか飲んでいないのに、ひょっとしたら(虚数部で)無限に飲んでいるのかもしれない。しかも記憶がない(自明でない)。たとえベロンベロンに酔っ払っていても、別の人格(定義域)では、俺は酔ってないぜ!と主張する。これはまさしくゼータ関数の特性ではないか。アル中ハイマーの気まぐれな行動は、リーマン予想をも体現する。ひょっとしたら、あらゆるランダムな自然現象は、無限級数によって数学的に表されるのかもしれない。これすべて、背後に偉大なオイラーの影を感じるのである。

本書を読んでいると、なんとなくフーリエ変換が懐かしく思い出される。アル中ハイマーは、いろんな酒を飲み回ると、つい悪乗りして行き過ぎた行動にでる。これは、いろんなアルコール成分の係数和が急激に振動して、人格がオーバーシューティングするためである。これがギブス現象の正体だ。ちょいとフーリエ変換ごっこでもして遊ぶとしよう。尚、遊んだ詳細は、酔っ払いディオゲネスのページに掲載する。たまにはHPも更新しないとすねちゃう。バイクばかり可愛がっているから、愛車のバッテリーが上がるのだ。

1. 数論
数学の歴史を紐解けば数論から始まる。それは紀元前6世紀のピタゴラス学派までさかのぼる。最初の対象は正の整数である。ユークリッドは、著書「原論」の中で完全数についての定理を記した。オイラーと数論の関係を調べるとゴールドバッハに辿り着くという。ゴールドバッハは、フェルマーが予想した「2^(2^n)+1は、すべて素数である」という考察をオイラーに紹介したという。物語は、オイラーがこれに反例を挙げたところから始まる。その後、オイラーは完全数と友愛数を考察し、すべての約数の和を考えることに没頭した。ユークリッドは、2^k-1が素数であれば、2^(k-1)・(2^k-1) は完全数になると証明した。ちなみに、2^k-1型の素数は、メルセンヌ素数と呼ばれ素数の中でも名声を博している。オイラーは、偶数の完全数に制限した場合、このユークリッドの十分条件が必要条件にもなることを証明した。ただ、完全数を発見しても、完全数が無限にあるかどうか?奇数の完全数は存在するか?などは未解決のままである。

2. 対数
オイラーの著書「無限解析入門」は、微積分の計算をするのに前提とされる知識を集めたものである。オイラー以前の解析は、曲線の性質を調べるものであったが、オイラー以後は関数を調べるものとなった。オイラーは、指数関数の逆を考え対数関数の概念に至る。おいらが学生時代に対数に出会った時は感動した。なにしろ面倒な乗算が、加算に置き換わるからだ。電子工学を専攻したので、デシベルの概念でこれを体感した。今でこそ、電卓で簡単に求められるが、古代の人々は対数表を使っていた。おいらも高校時代、教科書の付録についている対数表を破りとって持っていた覚えがある。オイラーは、指数関数や対数関数の無限級数展開を求めようとした。彼は、自然対数の底e(ネイピア数)を無限級数を展開して求めている。また、対数と調和級数の関係も考察する。そして、オイラーの定数ガンマが登場する。これはオイラー・マスケローニ定数とも呼ばれる。

3. 複素数
三次方程式の実根を解く時に、避けることができない概念として虚数が登場する。それは、カルダーノの公式として知られるが、二乗してもマイナスになる場合がある。オイラーは、これを虚数の概念を用いて解決した。ド・モアブル - オイラーの定理は、複素代数の基礎となっている。ここでオイラーの公式も紹介される。それはいいとして、なんじゃこりゃ!
i^i = exp(-π/2) × exp(±2πk)
オイラーは、こんな言葉を残しているという。
「なんと注目すべきことなのだろう。なぜなら結果は実数であり、しかも無限個の異なる実数を含んでいるのだ。」
k=0 の時、i^i = exp(-π/2) = 1 / √exp(π) = 0.20787957... になるらしい。
数学界で美しいとされる等式 exp(πi) = -1 の両辺を平方根すると、
exp(πi/2) = i の両辺をi乗すると、exp(-π/2) = i^i
ほんまや!gさん電卓で試すと...感動するほどのことではなかった。

4. 解析的数論
オイラーの特徴は、数論を解析的に扱っていることである。素数を中心とした分野に微積分を持ち込んだ。ここで不自然なのは、数論の対象が離散的であるのに対して、微積分の対象が連続体であることである。それを見事に融合してみせた。素数定理は、自然数の中に素数がどのくらいの割合で含まれているかを述べる定理である。素数が自然数の中にどのように分布しているのかという問題は数学界の難問の一つである。
本書では、付録で紹介されるが、ゼータ関数をオイラー積で表している。
ζ(s) = Σ n^-s = Π 1/(1-p^-s), ただしpは素数
ちなみに、ζ(2) = π^2/6 は、バーゼル問題である。
おもしろいのは、正の数を成分とする無限個の和が、素数全体を成分とする積で表されていることである。これは、s=1の時、左辺が無限大であることから、右辺の積も無限大となり、素数は終わらないことの証明にもなっている。ちなみに、素数が永遠に見つかることを、既にユークリッドが証明している。
(2 × 3 × 5 × 7 × 11 × ... × N) + 1, (Nは素数)
これは、2からNまでのどの素数でも割り切れないので、Nより大きな素数である。だから素数は無限に存在する。なんとエレガントなんだ。更なる疑問は、素数の存在がまばらになる様子に法則はあるか?与えられた数よりも小さい素数は何個あるか?これがリーマンの扱った問題である。いずれリーマン予想に関する書籍にも挑戦してみたい。

5. 代数
代数は、古代ギリシャにまでさかのぼり、方程式を解くことに起源を持つ。開花させたのは、9世紀のイスラムの数学者たちで、アル・フワーリズミーは1次、2次方程式の論文を書いた。3次方程式の解は歴史的にやや複雑なところがあるがジェロラモ・カルダーノが著書で示し、4次方程式の解はその弟子ルドヴィコ・フェラーリが導いた。オイラーも4次方程式の解を別の方法で導いているという。当時の数学者たちは、どんな多項式でも1次もしくは2次で因数分解できると信じていた。オイラーは、高次方程式の解法を導こうとするが、できなかった。後に、ニールス・アーベルによって、5次以上の方程式に決まった代数的解法がないことが証明された。こうした代数の世界でも幾何学的解釈が登場する。それは、ガウスらによる複素数平面の導入である。ある関数が複素微分可能な場合、その関数は解析的であり、これを整関数というらしい。そして、「有界な整関数は定数である」というリウヴィルの定理が登場する。この定理、おいらにはよく分からない。そもそもcos関数やsin関数自体は微分可能な上に、定数にはならない。本書の説明では、実数の範囲ではその通りだが、複素数全体上では有界ではないので、この定理の判例にはならないという。まるで魔法にかかったようだ。波の世界はなんでも酔っ払いにしてしまう。ちなみに、本書は、この辺りの知識は、一般の複素解析の講義で数ヶ月かかることを強調している。

6. 幾何学
古代ギリシャでは、数学は幾何学と同義であった。オイラーはユークリッド幾何学にも大きな遺産を残した。幾何についてのオイラーの論文は、座標軸がおかれた解析的なものであったという。そこには、代数学の融合が見られるようだ。ただ、当時は、解析幾何学が本当に幾何学なのかと反論された時代でもあった。
「ヘロンの公式」は、三角形の三辺の長さから面積を求めるものである。本書は、このエレガントな証明を紹介している。また、三角形の重心、垂心、外心が同一線上にある「オイラー線」を発見する。
また、「フォイエルバッハの円」も紹介している。「9点円」と呼ばれるものである。
「三角形の各頂点から向かい合う辺へ下ろした垂線の足を通る円は、3辺の中点を通り、更に垂心とそれぞれの頂点を結ぶ線分の中点を通る。」
余談で、モーリーの定理にも触れる。ユークリッドは、3つの角を二等分することで三角形の内心を見つけたが、フランク・モーリーは三等分することを考えた。既に、コンパスや定規で角の三等分線が作図不可能であることは証明されている。ただ、その結果には感動させられる。3つの角の三等分線が交わる図形は、正三角形を形成する。この図は、なんとなく宗教の香りがする。

7. 組合せ論
組合わ論は、離散数学の中で重要な分野の一つである。その対象は物を数えることであり概念は簡単であるが、一筋縄ではいかない。ものを選択する時、可能な配列が何通りあるかが鍵となり、これは確率論の基礎でもある。本書は撹乱順列を取り上げる。n個の文字の配列があった時、全ての文字が元の配列の場所に一致しない再配列の方法は何通りあるかという問題で紹介される。ここで、オイラーが与えたe^xの級数展開が利用される。そして、無限個の配列に対して、全ての文字が一致しない再配列の確率は、
なんと、x = -1の時で、e^-1 になっちゃった。驚くべきは、結果にeが現れることだ。しかも、この極限値の収束は非常に速い。つまり、20個以上では、無限個でも確率は、大して変わらないというのだ。これは、20杯以上飲んじゃえば、その先に見えるものは同じで、全て「天国への階段」へ通ずることを示しているに違いない。

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