2022-12-04

"エッセンシャル思考" Greg McKeown 著

仕事を断るのは、意外と難しい。独立した動機の一つに仕事を選ぶということがあるが、それでも難しい。村社会には、NO! と言えない空気が淀んでいる。人生において重要なことは?最優先すべきことは?などと思いを巡らせつつ...

「"NO" は完成された文章である。」... アン・ラモット

高度な情報化社会では、情報検索の手段が豊富で、その気になれば大抵の知識が手に入る。学ぼうと思えば、いくらでも学べる時代である。言い換えれば、受け身な人は置いてけぼりを喰らい、意識格差をどんどん拡大させていく時代でもある。

では、何を学ぶか?学習意欲が旺盛なのはいい。生き甲斐にもできる。
しかし、人生は短い。あらゆることを吸収しようとすれば、消化不良で吐き気を催す。学ぶことによって馬鹿になるのでは、何をやっているのやら。優秀な人ほど、こうした類いのパラドックスに陥りやすいという。
頭がいいと、いろんなことが認識でき、多くのことを学べそうだが、学び方にも不相応というものがある。まずは、楽しむこと!これを人生の基本方針としたい。重要なことに集中するということは、重要でないことを切り捨てるということ。そして、捨てる能力が問われる。これが、「エッセンシャル思考」というものか...

そして、三つの呪文を、あっさりと上書きする。
「やらなくては」ではなく「やると決める」
「どれも大事」ではなく「大事なものはめったにない」
「全部できる」ではなく「何でもできるが全部はやらない」

尚、高橋璃子訳版(かんき出版)を手に取る。

「向上心はときに絶えざるプレッシャーとなってあなたを襲う。あれもこれも試したい、いいことは全部自分の生活に取り入れたい。だが、そんなやり方で人は進歩できない。何事も中途半端に終わるのがオチだ。この苦境から抜け出すための鍵は、人生を本質的要素だけに絞り込むこと...」
... ダニエル・ピンク

基本的人権の一つに自由権とやらがある。信仰の自由に、思想の自由に、職業選択の自由に... 社会には自由が溢れている。少なくとも建て前では...
それで、自分は自由に生きているだろうか。組織にどっぷりと浸かり、義務という名の強迫観念に囚われる日々。心理学には、学習性無力感という用語を見かけるが、諦めの境地にも似た感覚に見舞われ、惰性的にやっていることばかり。選択肢があるにもかかわらず、選択肢を否定することによって消極的な選択を引き受けている。本当に自分の足で歩いているのやら...

「選ぶ能力は誰にも奪えない。ただ、本人が手放してしまうだけだ。」

トレードオフを直視せよ!
グレッグ・マキューンは、何かを取るために何かを捨てるというタフな決断を要請してくる。
「エッセンシャル思考は、より多くのことをやりとげる技術ではない。正しいことをやりとげる技術だ。もちろん、少なければいいというものでもない。自分の時間とエネルギーをもっとも効率的に配分し、重要な仕事で最大の成果を上げるのが、エッセンシャル思考の狙いである。」

そして、重要な選択を見極めるために、五つの助言を与えてくれる。
「じっくりと考える余裕、情報を集める時間、遊び心、十分な睡眠、そして何を選ぶかという厳密な基準」
あればありがたい贅沢品ばかり。遊び心なんて、ふざけた事を言う前にさっさと働け!などと怒鳴られそうな。しかし、これらを避けていては袋小路に入ってしまう。まるでアドレナリンジャンキー!
エッセンシャル思考の人は、時間をかけて調査し、じっくりと検討することを大切にするという。逆説的に、忙しい時ほど考える時間を確保することが合理的な行動につながると考えるようである。
一度立ち止まる時間を作るというのは、重要だと分かっていながら、実践するのは難しい。日々の仕事を思えば、勇気もいる。それが現実的でない!というなら、一度人生をリセットするぐらいの覚悟がいるやもしれん...
「本質を見失うことの代償は大きい。自分で優先順位を決めなければ、他人の言いなりになってしまう。」

さらに、自分の能力を最大限に引き出すためのシステマティックな方法として、習慣づくりを少しばかり伝授してくれる。良い習慣によって、本質的な行動を無意識化するというわけである。そして、マインドフルネスを身につけよ!と...
スポーツ選手が試合に集中するために、練習などでルーティンというものを重要視する傾向がある。日々の思考法にも、そうした儀式的な所作が結構役に立つ。ジャンクフードを断ち切るのにも...
正しい習慣は、妨害に打ち克つための最強の武器になるという。本質的な目標に向かう行動を習慣づけてしまえば、あとは自然に振る舞うだけ。習慣づけにちょいとばかり努力がいるけど...

「決まりきった行動は、賢い人の場合、高い志のあらわれである。」
... W・H・オーデン

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