ジェームズ・ロリンズのシグマフォースシリーズに触れるのは、11 作目。このシリーズの作品番号は 0 から数えるので 10 番目ということになる。最初の邦訳版が刊行されたのが、2005年!20年かけてようやく追いついてきたか...
最先端の科学と古代から語り継がれる歴史を融合させる手腕は相変わらず。翻訳者桑田健(竹書房)との相性も相変わらず。そして、徹夜明けのブラックコーヒーも。今日も仕事にならんことも...
原題 "The Bone Labyrinth"...
Bone とは、アダムのものか、イブのものか。いずれにせよ、ホモ・サピエンスの祖先を巡る旅へといざなう。つまりは、人類の知能の起源を辿る旅へ...
意識という現象は、どのように説明できるだろうか。サピエンスは、ラテン語で「賢い」という意味。ヒト属で現存する唯一の種は、地球上で最も支配的な存在となった。言語能力は知能のバロメータとなり、人間が編み出した学術的論理は、生存競争の勝者を正統化する。小才の利く者が集団の中でうまく立ち回り、人が好く、愚直なだけが取り柄の者は踏み台とされる。これが、賢い種の社会か!狡猾な者が勝ち組となる論理は、市場経済や軍事においても実証済みときた。
人類の脳の発達過程は、約二十万年前のホモ・サピエンスの出現まで遡ることができよう。しかし、約五万年前に突然、武器や道具などの創意工夫、芸術や音楽といった嗜好が生まれ、文明なるものが出現した。脳の大きさや形は、それよりずっと昔からほぼ同じだったにもかかわらず。いや、過去一万年の間に脳のサイズは、むしろ 15% ほど縮小しているらしい。人類は、半導体のように集積度を上げ、よりコンパクトで合理的な構造を獲得しようとしているのか。人類学者は、この進化的な突然変異を「大躍進」と呼ぶ...
「知能の物差しとは変わることのできる能力だ。」
... アルバート・アインシュタイン
本書のテーマは、古代に生じた大躍進の原因を探求し、さらに第二の大躍進が生じる可能性を模索しようというもの。それは、なにが人間たらしめるか、を問うことに要約できる。
物語は、ネアンデルタール人やヒト科の亜種との交雑に始まり、遺伝子の組み換え技術に至る。どちらが亜種かは別としても、人間のゲノムにはネアンデルタール人や複数のヒト科絶滅種のゲノムが含まれていることが、科学的に判明しているという。なるほど、乱交パーティ遺伝子は現代人にも組み込まれていると見える。
ちなみに、チベット族が高地でも生活できるのは、デニソワ人という絶滅種の遺伝子のおかげだとか...
「知能とは進化における偶然の産物であって、必ずしも優位とは限らない。」
... アイザック・アシモフ
生物学には、「雑種強勢」という用語がある。それは、二つの異なる種が交わると、生まれた子供はどちらの親の種よりも形質的に強い特徴を持つというもの。例えば、メスの馬とオスのロバの間に生まれるラバは、空間的知能が馬やロバよりも優れているのだとか。
それで、人類とネアンデルタール人との間に、どんな雑種強勢がもたらされたというのか。ネアンデルタール人は、単なる原始的な穴居人ではない。ある研究によると、虫歯の痛み止めに、鎮痛効果のあるサリチル酸を含む植物や天然の抗生物質であるアオカビを口にしたことが報告されているという。食人の習慣があったことも...
遺伝子の良いとこ取りとくれば、生命体そのものがまるで遺伝子の方舟!
DNA の欠片さえあれば、人間はクローンを創るだろう。いつか必ず!生殖細胞レベルでの制御はドーピング問題も意味をなくすだろうし、放射能下でも生きられる遺伝子までも求めるだろう。
古くから人間は、象や猛獣を兵器とし、ネズミのような小動物を病原菌をばらまく兵器に利用してきた。バイオテクノロジーによる軍拡競争は激化するばかりで、はるかに凶暴な種を創り出しては軍事利用するやもしれん。絶滅種を対象とすれば、ジェラシック・ワールドも現実味を帯びる。そして、遠い昔の偉人たちが蘇るとすれば...
人間の好奇心は、ことのほか手ごわい。純粋な好奇心は、いずれ脂ぎった欲望と結びつく。人間は、自ら編み出した技術によって人間自身をどこへ導こうというのか。進化の歴史は、単純な右肩上がりではなさそうだ。何事も進化の過程には、退化の時期も必要なのであろう。自省の意識を植え付けるためにも... 自浄遺伝子を育むためにも...
「ここに眠りしはアダムの骨、人類の父。永遠(とわ)の眠りを妨げることなきよう祈る... さもなくば、世界は終わりを迎えるだろう。」

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