2006-12-16

"代表的日本人" 内村鑑三 著

新渡戸稲造「武士道」、岡倉天心「茶の本」と並んで、日本人が英語で日本の文化・思想を西欧社会に紹介した代表作らしい。
「武士道」を読んだ時はその時代の表現を忠実に再現しているせいか文面が難しく、何度も読み返さないとなかなか頭に入ってこない。それを覚悟で本書にも挑戦してみたが、アル中ハイマーにでも非常に読みやすく拍子抜けだ。
描かれているのは次の5人。
1. 西郷隆盛
鎖国は西欧の欲望の餌食から守られたとしながら、開国への時節が到来し維新革命に至ったことを記している。
TV討論などでもしばしば見かけるが、改革派ってものは古いシステムを貶すものである。おいらも、いろいらな方面で改革的な考えは好きである。まずは先輩方が作り上げたシステムに敬意を示しているところは見習わねばなるまい。
2. 上杉鷹山
本書ではこの名が一番好きだ。なぜならば酒の銘柄に見えるからである。
「民をいたわること、わが体の傷のごとくせよ」を教訓とする。人心掌握による産業改革。侍を平時は農民として働かせ、目的の中心は家臣を有徳な人間に育てること。東洋思想の美点は経済と道徳を分けない。富を得るには礼節を知る人とする。
「自己を修める者にしてはじめて家を治め、家を整える者にしてはじめて国を統治できる」を実践したとある。
特に気に入ったところは、両親の定めるまま結婚した女性は先天的知的障害者であったが心から慰めたとある。おいらは、なぜかこういう話に弱いのである。
3. 二宮尊徳道
徳力を経済改革の要素として重視したとある。「最良の働き者は、もっとも多くの仕事をする者ではなく、もっとも高い動機で働く者である。巨大事業を成しえるものは財政面ではなく道徳面である。」
なるほど、おいらは仕事をするのに高い動機など持ちあわせない。しかし、血圧が高いせいか妙な動悸はいつもしている。
4. 中江藤樹
「近江の聖人」として有名な人物で、孔子像を全面に学校を開いたとある。「いかに学識に秀でていても、徳を欠くものは学者にあらず。いかに無学でも徳を具えればただの人ではない。学識は無いが学者である。」
おいらも、孔子は好きなのである。
5. 日蓮上人
仏教には、多くの宗派、矛盾しあう経典がある。これらを纏め上げる苦悩を紹介している。
そう言えば、昔から不思議に思っていたのだが、こうも多くの宗派が生まれ、しかも、歴史的にこうも罵り合ってきたのか?同じ仏教じゃないのか?宗教は胡散臭いと思う理由である。しかし、釈迦の無神教は好きなのである。

いずれも、驕りなく、謙虚、礼節、勤勉、といった、日本人の道徳感を紹介したものである。おいらは、すぐに有頂天になるので見習うべきところが多い。
夜の社交場に多勢で押しかけると、なぜか最初においらにおしぼりが渡される。なぜか最初においらにグラスが用意される。偉そうな態度をしているのかもしれない。行動を慎まなければなるまい。
こういうものが新鮮に読めるということは、人間的に退化していると思わねばなるまい。

西郷隆盛、中江藤樹は、王陽明の影響を受け、進歩的な希望を吹き込んだとある。おいらの"購入予定リスト"にも陽明学の本をリストアップしておこう。ちなみに、このリスト、書籍名が増える一方で一向に片付く気配を見せない。どこぞのバグリストのようである。

なんの本だったか?思い出せないが、「西洋人は宗教で道徳を教える。故に日本人の無宗教感には違和感がある。無神論者は軽蔑される」というようなことを読んだ覚えがある。これに反論するがごとく、日本人の道徳観は武士道や伝統、礼節から生まれている。と説明しているような気がする。
無宗教といっても個々が独自に持つ宗教観はあるわけで、種別できる宗派が無いだけではないのか?そもそも有名な宗派に属している国ほど紛争が多いのはどういうことか?

おっと、いつのまにか勝手に仮説を立て、自問自答している。悪い癖である。悩み悩んで、またまた眠れない。アル中ハイマーは今日も睡眠薬を使うのである。さかやクリニックで処方してもらった純米系の720ml。これ効くぜ!

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