2007-05-06

"これなら分かる最適化数学" 金谷健一 著

例年連休は忙しいものであるが、今年のゴールデンウィークはゆっくりできて幸せである。よって、「基礎を見直す」をテーマに過ごすことにした。とりあえず数学でも味わうのである。
本書は「これなら分かる応用数学教室」の姉妹書である。前書を読んだ時はウェーブレットを理解させてもらったので感謝を込めて本書も購入した。本書は「これなら分かる応用数学教室」ほどのインパクトは無かったが、それなりに理解した気になれたので幸せなのである。

おいらは学生時代から数学は嫌いである。授業となると大嫌いだった。こと科学分野は暗記教育であり、体感できる気がしないからである。試験となると公式のオンパレード。おいらは記憶できないからその場で公式を求めるところから始めなければならない。時間がかかるので大きなハンデである。
どうせ試験用に覚えた知識などリフレッシュサイクルの短い記憶領域にしか留まらない。よって身につくわけがない。こうして成績が悪いことを言い訳するのである。

物事の理解とは、ある程度の素人にでもくだいて説明できることを言うのではないかと思う。数学の先生は、実は数学を理解していない人が多いのではないかと疑問に思うことがある。少なくとも今まで受講したものは言っていることがよくわからないので質問すらできない。しかも、やたら公式で片付けられる。これは、しばしば見かける専門用語をやたら並べて難しく説明する評論家連中のようである。
そもそも理解できないのはアル中ハイマーが馬鹿だから仕方がない。しかし、最近理解させてくれるものもあるから不思議である。アル中ハイマー病の治療として、最初から数学をやりなおすのも悪くないと思う今日この頃である。ただ、少々遅すぎたようだ。フィールズ賞の年齢制限にひっかかってしまうのだ。アル中ハイマーは夢と現実の境界をさまようのである。

ここで取り上げる最適化手法とは、ある状態を最大あるいは最小にする設計手法である。この手法は、利益や損失を求めてリスク管理する場面などで使われているので少々興味がある。本書の前書きにもあるが、「オペレーションズリサーチ(OR)」という分野で用いられる。計算機が発達すると、複雑系を数値化し体系化する様々な手法が栄えるのだろう。プロジェクトマネジメントや戦略論など、その分野は多岐にわたる。最近では、情報通信技術の設計などにも使われる話をよく耳にする。

本書は、例題を用いた丁寧な解説がなされているものと思われる。酔っ払いにでも理解した気になれるからである。なによりも、まず数学的な基礎知識である曲線の法線ベクトルや固有値問題から始まるところがうれしい。
関数の極値を求める問題では、関数の移動方向に対して収束するまで繰り返す反復解法が基本であるが、その代表であるニュートン法を、また、関数を当てはめる問題では最小二乗法などを、前半部で取り上げてくれるのは、アル中ハイマーにでも少しは数学の記憶があることを認識できてうれしい。後半部では、生産ラインの運営効率や、ネットワークの経路解析、文字列の検索解析のような例を体感できるところがうれしいのである。しかし、うれしいことばかりではない。高度な数学的解釈もある。おいらには到底理解できないので読み飛ばすのである。アル中ハイマーは不幸な領域には近寄らないのである。

本書とは関係ないが。。。
複雑系の数値化と言えば、昨日ちょうど将棋チャンネルでコンピュータ将棋の解説をやっていた。3月に行われた渡辺竜王 vs. ボナンザである。チェスではコンピュータが勝ったようだが、将棋では竜王の圧勝だろうと思って大して気にもかけていなかった。しかし、なかなかの内容でおもしろい。
竜王もみっともない姿は見せられないというプライドがあったのだろう。きっちり対策してるように見える。上手く誘いながら予想通り圧勝かのように見えた。
そして妙なボナンザの指し手。実はこれが凄い読みの入った手だったのだ。それを、きっちりと読んで対応するあたりはさすが竜王である。なんて馬鹿馬鹿しい指し手だと思って、うっかり指すとやられてしまうような局面がいくつか見られた。
今回のボナンザは8CPU並列対応。竜王対策に全検索からポイント検索などアルゴリズムの改良もなされているという。いまや、現在のソフトウェアに、ハードウェアの進化で人間を凌駕できると開発者は言う。実際は、最初から予想されていた戦型通りになったり、終盤の評価などまだまだ問題点はありそうだが、少なくともプロ棋士がいつでも勝てるという内容ではない。
番組ではアルゴリズムの紹介も少なからずあった。形勢を評価する時は全ての駒の価値を数値化する。その駒のポテンシャルはもちろん、その駒の位置関係、動ける範囲、駒同士の連携のバランス、などなどを対象としている。そして、総合点で形勢判断するのだが、人間では予想もつかない評価をする。誰が見ても竜王が優勢だろうと思っている場面でも、ボナンザは互角とみてるところなど、現在の形勢評価をログで確認できる。しかも、その判断が絶妙であり、馬鹿馬鹿しい手に見えても、その奥の深さを教えてくれる。更に、ボナンザの読みをその場で対応してのけた渡辺竜王の凄さは感動ものである。ちなみに、渡辺竜王は小学生の頃から見た目が生意気そうだが、まあ棋士はそうした人が多いのだが、ブログを見ていても人間性が出ていて、おもしろく鋭い解説をしてくれるなど、なかなかの紳士で好感が持てる。最近は好きな棋士の一人である。
いまや、新手の発見手段としてコンピュータが使われる時代がきたのかもしれない。羽生世代が登場した頃は定跡破りで衝撃が走ったものだが、現在はコンピュータの登場による衝撃が走る。

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