2007-04-29

"世界の歴史をカネで動かす男たち" W. Cleon Skousen 著

本書は政治暴露本であり、アル中ハイマーはあまり近寄らない領域である。
ただ、ミステリーよりもリアリティを感じるので最近好んで読むようになった。また、著者の経歴もおもしろい。著者クレオン・スクーセンは、16年間のFBI在職、4年間の警察署長、10年間の警察雑誌編集長、17年間の大学教授、そして政治評論家である。捜査官ならではの裏が覗けそうである。

本書は、1300ページにもおよぶ書籍「悲劇と希望」の紹介書(解説書)の位置付けにある。「悲劇と希望」の著者はキャロル・キグリー。1966年に刊行された。これは、現実社会を牛耳る金融支配体制の暴露本である。そして、刊行後間もなく全米書店から姿を消した。権力の中枢がこの暴露を時期尚早と判断したからであろう。その後1970年、本書の原書である「裸の資本主義者」が発刊される。本書は、日本の出版界、学術界から黙殺された邦訳版である。と紹介される。この序文ですっかり立ち読みの罠に嵌ってしまった。ゆっくり読みたい。またもや衝動買いするのである。

いきなり全米の凶悪犯の紹介から始まる所は、いかにもFBIらしい。
どんな凶悪な犯罪者も自分自身が悪いとは思わないと語る。これは人間の真理かもしれない。人間はレベルの違いはあれども、過去に犯した罪は数あるはずである。
おいらは自分が犯してきた罪など思い当たるところが無い。なるほど、人間とは身勝手なもののようだ。ただ、アル中ハイマーだから記憶が辿れないだけで少し意味が違うかもしれない。と言い訳して許してもらえると思っているのは、もっと罪深いのである。
人間は許容範囲までは自分の罪を認める。許容範囲を超えると豹変して攻撃的な態度を取る。罪を認められる範囲が、その人の器というものだろう。さて、前置きはこのぐらいにして本題に入ろう。

本書は「国際エスタブリッシュメント」による闇の権力が世界支配を企てる。という一般的に語られる陰謀説を語っている。「悲劇と希望」の著者キグリー博士はこの黒幕に属している人物である。
彼曰く。「この黒幕は信用に足るグループであると保証し、もはや暴露しても問題がない。」と言い切る。おいらは、いきなりむかつくのである。
この国際エスタブリッシュメントを「銀行家一族王朝」という言葉で表現している。
「ここ二世紀で、欧米の巨大銀行一族が国際金融連合を形成し、政治支配を目指す新たな王朝を築き上げた。こうした銀行王朝は、どんな政府に対しても緊急時に借金できる財源を確保していなければならないこと。その資金を自分の財源から拠出できれば、意のままに王も民主的指導者も操れることを熟知している。」
主要な銀行一族を列挙すると、ロスチャイルド家から始まる。しかし、しばしば陰謀説で登場するようなユダヤ人の企てではないと断言している。
「世界的な陰謀を研究する時に、あらゆる悪の根源は大掛かりなユダヤ人の陰謀であると決めつけるヒトラー主義を鵜呑みにしてはならない。こうした企みを抱くグループは国際銀行家であって、特定の人種や宗教ではなく金と権力への渇望であることを心に留めておくことが肝要である。」
こうした超富豪王朝の世界支配組織が地球征服を目指しており、社会福祉的法律を適用したり、また、必要な場所では共産主義革命もいとわないというのである。キグリー博士自身が、自家用ジェット機で世界を飛び回り、この秘密権力グループの一員であると自負している。

キグリー博士は、国際エスタブリッシュメントによる金融支配は大方良いことである。と満足げに語る。資本主義の暴走を抑えつつ共産主義を支援したこと。FRBの誕生とそれを牛耳る銀行一族の存在。モルガン、ロックフェラー、カーネギー財団は中国を共産主義陣営に売り渡したこと。朝鮮戦争で米国が勝てないように巧みに仕組まれたこと。ロックフェラー系の石油会社、2社が、過去20年間、政治改革が世界各地で発生するたびに、石油、天然ガスの権益を独占してきたこと。などなど。
「平和を希求する諸国家の連邦であるはずの国連は偽善的な茶番でしかなく、その創設メンバーの米国は世界で最も戦争、破壊、世界制覇を擁護する存在であることは明らかである。拒否権の発動により安保理が機能を果たさない。国連本部の全部門がロックフェラー家の援助を受けているのは偶然の一致ではない。」
日本において「プラザ合意」「金融ビックバン」「郵政民営化」となんとなく強制的に仕組まれたという感じがするのは偶然ではないかもしれない。日本で講義される経済学はゴミのような大量の情報で欺瞞されていると言い切っている。その件はまったく同感である。

ここで、本書の著者スクーセンはキグリー博士の言うところの「世界的陰謀」の中核体として「国際銀行家」を正確に定義している。これは、貯蓄銀行や商業銀行とは違うのである。
イングランド銀行を主体として「シティー・オブ・ロンドン」が形成され、この「シティー」こそが事実上、主権を有する世界政府であるという。イングランド銀行が英国下院の支配監督検査を受けない。FRBも言うまでもない。世界金融システムの本質はイングランド銀行と「シティー」の権力構造に米国を取り込み世界国家へと進む。世界金融は民族、国家を一切認めない。
恐ろしいことにキグリー博士は「世界中の政治経済力が巨大な一枚岩の全世界的権力に収斂しつつある」と断言している。このような闇組織に逆らった政策を取る国は滅ぼされかねないというのである。"長いものには巻かれろ"ということか。日本国の最も得意とする戦略である。

国際エスタブリッシュメントにとっての脅威についても語られている。
「国際エスタブリッシュメントにとっての脅威は、米国中流階級である。中流階級こそ、進歩的、自己統治的、自由を愛する国民性を維持する上で一番重要な階層だからである。この階層は独裁制に逆らう。米国中流階級を無慈悲にも抹殺するしかない。そして、高度に集中化された社会主義国家へと向かっている。」
もはや堂々と批判できる人間は一般市民でしかないのか?マスコミによる世論調査などの報道は、まったく胡散臭い。数字の改ざんをしなくても、調査方法そのものに方向性をつけていると自然に感じとれる。少なくとも、アル中ハイマーの周りでは、しばしばマスコミ報道と対極にある。きっと、似たもの同士の集まりだからであろう。社会への反抗分子の集まりである。

本書は最後に、国際エスタブリッシュメントの存在を明らかにしたキグリー博士への感謝を述べつつ、こうした「悪党は駆逐されるべき」と述べている。米国の二大政党は、もはや権力のバランスを保つためには機能できないと言い切っている。日本においても、国民主権により選ばれた国会議員であっても、巨大な官僚が支配している。そこに、国際エスタブリッシュメントが圧力を加えれば万事休すである。

キグリー博士は、社会の一部では悪い方向に向かっていることを認めつつも、人類の超エリート階層というのは、理性を失ったり、慌てふためくようなことはない。と言い切っている。
世界の超エリート階層による支配とは、人間の倫理観とは、そんなに信頼できるものなのだろうか?過去に輝かしい功績を上げた人間でも、現在、努力を怠ると過去の栄光にすがる。大金を持つと人間は豹変する。人間とは思い上がるものである。
本書は、一般のマスコミや政治指導者達の無知さかげんをあざ笑うかのごとく語られている点はとてもおもしろい。しかし、こうした行為を恥じらいもなく公表しているのは少々むかつくのである。このような暴露本や陰謀説は、冷戦が終わった途端に吹き上がる。大抵は10年以上前にさかのぼる。リアルタイムでは、権力者に抹殺されるからであろう。ということは、現在進行中の陰謀はどんなものだろうか?
支配者からすると、馬鹿で酔っ払いな国民ほど扱いやすいものはないのだろう。アル中ハイマーは、ますます福祉重税国家の罠に嵌っていくのである。

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