2007-12-20

"ボーイング747はこうして空中分解する" Carl A. Davies 著

読んだ記憶もなければ、買った記憶もない本を見つけた。しかも、古いカバンの中にある。このカバンはニ年以上使っていない。本書はニ年以上眠っていたことになる。きっと誰かにもらった本だろう。いや!神様の贈り物かもしれない。いや!ホットな女性からのクリスマスプレゼントに違いない。今年中に処理してすっきりさせよう。

本書は、ボーイング747の墜落事故にまつわる物語である。747といえば通称ジャンボ、機首が卵型で頭でっかちなやつだ。この機首部分をセクション41といい、重要な欠陥があったという。著者は、ボーイングレポート(秘密修理文書)を入手し、更に数々の証拠を分析した結果、パンナム103便、TWA800便、エア・インディア182便の墜落原因は、この欠陥によって引き起こされたと主張する。そして、1988年12月21日のパンナム機爆破事件を中心に取り上げる。マスコミはパンナム103便をテロ事件として報じた。この事件はリビアによる報復事件として扱われる。
本書は、素人にも読み易すいように意識しているせいか?肝心なところが大雑把である。また、話が飛ぶので少々読み辛いところもある。それでも、政治的な話はまあまあおもろい。

1. 747の欠陥
初期型747の抱える問題は、飛行中にセクション41が胴体から外れるというものだ。まれに地上走行中でも機首が落ちるという報告があったというから笑わせてくれる。ボーイングレポートは、まさに構造修理を必要とする部分として示していると語る。事故後、パンナム103便、TWA800便、エア・インディア182便は、3機とも機首部分が他の残骸から何キロも離れた場所で見つかっているらしい。原因は、金属疲労と破断であるが、問題とされるのは劣悪なアルミニウムにある。1970年代初頭、数々の産業が苦難する時代、航空業界も例外ではなかった。コスト削減を強いられる中、アルミニウムのコストは馬鹿高い。そんな中でボーイング社は、低価格で納入するメーカーを旧ソ連で見つけたという。一般的に旧ソ連のアルミニウムの品質は悲惨なくらい劣悪なのだそうだ。ちなみに、初期型とは747-100、747-200、747-300を指す。ANAのサイトによると、747-400は活躍中のようだが、初期型は使ってないようだ。JALのサイトによると、747-100Bは、2006年に退役してる。747-200、747-300はまだ現役っぽいなあ。どっかの掲示板によると、747-200、747-300は、2009年に退役を控えているらしい。

2. なぜ陰謀説に?
なぜリビアによる報復事件として扱われたのだろうか?本書はテロリズムの根源についても触れる。それは、迫害され続けたユダヤ人国家であるイスラエルを建国したところから始まる。アラブ人の不満は、イスラエルがパレスチナの地に建国されたことにある。イスラエルはアメリカの後ろ盾により元気づくが、パレスチナは戦力で圧倒されゲリラ戦を余儀なくされる。よって、イスラエルを支援するアメリカは敵国である。これが現在のテロリズムであると語る。歴史的には宗教紛争はずっと以前からあり、その中で体当たり行為もあっただろう。これをテロリズムの根源とするのは、もう少し検証が必要だと思われるが、面倒なのでとりあえず、ここでは本書の説を受け入れておこう。こうした背景では、まずアラブ人を疑え!となる。パンナム103便事件の発端は、米軍がイラン航空のエアバスをイラン軍戦闘機と誤認して撃墜したことにある。ホメイニ師は、その報復にアメリカ航空機の撃墜を秘密裡に命じる。攻撃の実行を元シリア陸軍士官アフメド・ジブリルに委任する。彼はフランクフルトで実行しようとする。フランクフルトはアメリカの航空機にとって重要なハブ空港である。パンナム103便も、フランクフルトからロンドンを経由してニューヨークへ向かうはずだった。しかし、その作戦はドイツ警察に押さえられ失敗しアラブ人が逮捕される。その時、東芝製ラジオの中に爆弾を仕掛けたが、この型と同じラジオがパンナム103便の残骸から見つかったという筋書きである。この論理では、アフメド・ジブラルの関与ということになりそうだ。そしてシリアとイランに疑いをかけた。それがいつのまにかリビアになっている。まあ、リビアもアラブ社会であるのだが。イラクがクウェートに侵攻した時、ブッシュ大統領はイラク攻撃を開始し湾岸戦争が勃発した。ちょうど、イランと共謀してパンナム103便を爆破したとされていたシリアが多国籍軍に参加する。湾岸戦争には、普段アメリカと敵対していたアラブ諸国の支援も必要だったのである。ブッシュ大統領は、急遽、シリアの代わりにリビアの避難を始めた。なんでもかんでもカダフィ大佐のせいにしたのである。その後、二人のリビア人が指名手配される。リビアのせいにする論理も簡単である。レーガン大統領は1986年トリポリをはじめとするリビアを爆撃した。これに対する報復だとすればいいのである。リビアはドイツのディスコ「ラ・ベル」での爆弾テロに関与したとされているがいまだ不明である。

3. なぜ政府は747の欠陥を隠したのか?
無理やりテロ事件にしなくても、アメリカ政府はなぜボーイング社の問題を隠すのだろうか?747の問題に対処するためには大規模な修理が必要だった。莫大なコストもかかる。下手すると運行停止である。これは世界的な大混乱にもなりかねない。航空会社側も消極的になる。特にTWAは何度も倒産の危機に陥っていた。修理コストの負担など不可能だった。この問題は、航空業界、アメリカ連邦航空局、アメリカ政府も知っていたのだろう。クリントン=ゴア組は1996年の再選運動資金として航空業界から献金を受けているという。しかし、単純に747の欠陥を揉み消すためだけに献金したとは考えにくいのだが。
欠陥の問題については、航空業界の体質もあるだろう。欠陥の修理やメンテナンスは最終的には航空会社の責任となる風潮にも問題がある。

今宵のアイリッシュ・ウィスキーは不味くはないのだが奇妙な味がする。なんとなくつぶやきたい気分だ。
著者は、アメリカ政府や、それに関わる高級官僚は嘘つきであると語る。これは間違いである。こんなことはアメリカ政府に限った話ではない。どこの国も政府、高級官僚は嘘をつく。逆に、彼らは反論するだろう。全て国のためだ。国の面子のためだと。正確には、業界も含めた彼らの既得権益のためであるとした方が現実である。少なくともくだらない陰謀を施すよりは、国の理性を見せる方が国益というものである。冷戦構造も終わり、アメリカは自らの理念に従い、強大な軍事力を楯に世界の警察官を自認している。そして、様々な紛争に介入してきた。その理想主義はある意味すばらしい。しかし、一部の情報を隠蔽し、警察行動が世論で操作されるならば、あるいは司法の判断が世論に流されるならば、いくらでも支配できることになる。裁判官が有罪を下した以上、論理的な説明をする義務がある。ましてや、一国家に疑いをかけたのだ。これは、国際法から、個人を裁くものまで全て同じである。そうでなければ誰が警察行動を信用できようか。また、充分な検証もなしで、一国の行動を支持することは無責任である。これが世論操作によるものであれば、間違った世論を助長することになり、もはや同罪である。
おっと、悪酔いしたみたいだ。寒くなると理屈っぽくなるのよねえ。お前、誰やねん?ちなみに、アル中ハイマーは二重人格症である。その証拠にいつも物が二重に見える。

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