2023-01-08

独り善がりな介護論... 地獄を見るのはこれからだ!

まずは、哲学者気取りで自問してみる。人間とはどういう存在か?人生とは、いったいなんなんだ?人間なんてものは、喰って!排泄する!ただ、それだけの存在やもしれん。そんな退屈な日常を紛らわすために、生き甲斐のようなものを見つける。ただそれだけのことやもしれん...

宇宙に存在するすべての物体は、なんらかの原子構造を持っている。原子は単体でも存在しうるが、そのほとんどが互いに結合して分子を成す。結合や分離を繰り返すからには、そこにエネルギーのやりとりがある。人体の構造は、だいたいそれで説明がつくだろう。そして、エネルギーを得るための摂取物と、エネルギー交換に生じる排泄物が問題となる。
では、魂はどうか?精神ってやつは?自由意志ってやつは、おそらく物理的には自由電子の集合体で説明がつくだろう。
しかし、それで自己を納得させられるだろうか...

「幸福になる必要なんかないと、自分を説き伏せることに成功したあの日から、幸福が僕の中に棲みはじめた。」
... アンドレ・ジッド

さて、婆ヤと爺ヤが要介護認定を受け、本格的な介護モードに突入してから五年が経つ。毎年、現状維持を目標に掲げるも、達成できたためしがない。婆ヤがパーキンソン病で難病指定を受け、爺ヤがアルツハイマー型痴呆症とくれば、本ブログのタイトルが「アル中ハイマーの独り言」では洒落にもならん。ただ、二人とも独りでは歩けない有り様で、徘徊できないのが有り難い。

介護を論じれば、体験談をぶちまけ、独り善がりな奮戦記となるは必定。
ヘルパーさんを呼べばいい!施設に入れればいい!... などと安直な助言はまったく役に立たないばかりか、むしろ腹が立つ。散歩に連れて行ってやれ?買い物に連れて行ってやれ?... そんな余裕あるもんか!一般論なんぞ糞食らえ!そして、こっちが糞食らう。
巷では「介護地獄」なんて言葉も飛び交うが、こんなものを書いているのだから、まだまだ余裕がある証拠。戦争をやっている国を思えば、まだまだ平和ボケな悩みやもしれん。
人生百年時代というが、それが本当なら、二十年ぐらいは覚悟せねば... 地獄を見るのはこれからだ!

「一生涯ずっと幸福だって!生きている人間でそんなことに耐えうる人はいないだろう。そうであったら、まさにこの世の地獄になるだろう。」
... バーナード・ショー

しかし考えてみれば、排泄処理さえ克服できれば、なんとかなる。やはり、人間なんてものは排泄するだけの存在か...
まず、トイレが近いのが如何ともし難い。一旦トイレに行かせれば、二時間ぐらいは放置できる。婆ヤと爺ヤが同期した日にや、連れションかぁ...
何をやるにしても、用を足した後のニ時間が勝負!外出にしても、仕事にしても、睡眠にしても... オムツが一回拾ってくれれば、計算上は四時間になるが、排便は算数じゃない。
日常は、変化に飛んでいる。ほんま、ぶっ飛んでいる。打ち身に、捻挫に、腰の疲労骨折に... いつも臨機応変を前提とした計画と予測が肝要だ。でないと心が折れるし、怒りを爆発させちまう。
よく、年寄りは怒りっぽいのがストレスになる!という話を耳にするが、うちは、それがないのが救い。むしろ穏やか。そして、ありがとう!と言う口癖を習慣づけるようにしている。施設や病院でもお世話になるし...

介護と仕事の両立は難しい...
個人事業主でなんとかなっているけど、いや、なんとかなっていないかも。介護のマネジメントは、プロジェクトマネジメントの要領に似ている。
しょんべんまみれで御飯を作り、ウンコまみれでキーボードを叩く。このマルチタスクは、なかなか手ごわい。
どんなやり方すれば、こんな所汚れるの?どんなやり方すれば、こんな汚し方するの?どこから掃除したらええか分からん。何度手を洗っても、臭いが残った感じ。潔癖症になりそう... せめて便器の中にやって下さい!
ご飯といえば、この世代は炭水化物ばかりに目がいき、タンパク質を摂らせるのに一苦労。
なにかと、どうにかなりたい!人間辞めたい!などと口にするのも頭が痛い。論理思考で悲観論をボヤくのはいい。いや、むしろいい。しかし、単にメソメソするのは御免だ!
何か行為をする度に、よっこらしょ!どっこいしょ!と掛け声で御老体を励ましているが、実は、自分自身を励ましている。イライラが募ると、一つ一つの行為が雑になり、足先や手指をぶつけたり、皿や瓶を割ったりと、さらに悪循環。おいらが機嫌が悪いと、御老体の調子も悪くなるので、とにかく笑顔。腹が立っても、目尻の筋肉を緩める訓練。これには、まだまだ修行が足らん!
介護とは、日々、気が狂いそうになる自分との闘い。いや、もう狂っちまったか...

運良く、介護環境は整っている....
週二回デイサービスを利用し、自宅から徒歩五分ぐらいの所。これにショートステイを絡めてなんとか乗り切っている。通所介護や病院など同系列の医療法人を利用し、ケアマネージャさんをはじめ、介護士さん、福祉用具屋さん、お医者さん、看護師さん、栄養士さん、理学療法士さん... ついでに食堂や売店のおばさんたちの連携が素晴らしい。プロとはいえ、彼らの仕事ぶりには頭が下がる。いつも笑顔で... 感謝以外に言葉が見つからない。
医療現場といえば、たいてい医師が主導する立場にあるのだろうが、逆に、介護士さんや看護師さんたちが率先してくれて、お医者さんは後ろから支えてくれるような位置づけ。こうした組織構造は、実に民主主義的で、上の命令がなければ動けない大企業や官僚組織が見習うべきであろう。彼らこそ日本企業の組織の在り方、意識の在り方を問うているような気がする。
延命医療はいらない。一流の医療もいらない。いかに穏やかに人生を完結させるか、これが最大の関心事である。第一希望は自宅のベッドで、第二希望はいつもお世話になっている施設のベッドで... 現実は、そうもいくまいが...

介護グッズも充実してきた...
介護保険で適用される住宅改修を利用し、玄関や風呂場やトイレに手すりを設置。家を建てる時は介護なんてまったく想定してなかったが、理学療法士さんによると、廊下が広く、バリアフリーで、わりと介護向けの構造になっているらしい。
福祉用具は... 歩行器、車いす、シャワーチェア、玄関口とトイレとベッドに補助手すり、あちこちに突っ張り棒... といった具合で、ジャングルジム状態!
ベッドも立ち上がりやすいように、ちょいと床から高さのあるヤツに... あとは、ナースコールに、監視カメラに、音声感知に、人体検知に... 24 時間稼働中!
ちなみに、我が家には、もう一人障害者がいて、2階がオフィスで、1階が障害者施設となっている。コロナ禍前は、技術屋さんがオフィス見学に来たものだが、今では、福祉屋さんの見学がちょこちょこ。介護そのものは辛いが、介護システムの構築は結構楽しかったりして...

しかしながら、最も頼りになる武器は、オムツだ!
なんといっても、オムツの性能がいい。自分でも試してみたが、災害時などでも使えそうだし、まだまだ研究の余地あり。
あまりカバー回数の多いやつに頼ると、オムツが重くなって却って被害が大きくなる... といった助言も頂く。簡易トイレという手もあるが手間がかかりそうで、今のところ却下。オムツの中で行儀よくやってもらうよう教育し、ようやく大袈裟なことにならなくなったところ。そのうち、AI 搭載のスマート・オムツなんてものが登場しないかと、笑いながら本気で期待しつつ。
いま最も幸せなひとときは、仕事に集中できる時間。タスクスケジューラが 24 時間コンビニ営業となれば、唯一の頼みはオムツだ!

車いすの性能もいい...
モノは、グレイスコア・アジャスト GRC-51B(松永製作所)。病院などに設置されている車いすは、点字ブロックなどの小さな段差に車輪を取られるが、こいつは滑らかに走行できる。しかも、ブラック色でスタイリッシュ!
こんな立派なヤツでなくていいのだけど、在庫はこれしかないから... 製造業者が是非試してみて!って言うから... と、福祉用具屋さんが即日持ってきてくれた。折りたたみ式に背折れ式でコンパクト。パンクレスタイヤもいい。病院では、パンクしているやつをよく見かけるし。難を言えば、重さが 17kg もあって自動車のトランクに乗せるのに一苦労...

はぁ~...
思いっきり愚痴っぽく書いてみたが、文章にすると冷静になれる。ストレス解消にもなる。論理的思考の威力か。
しかし考えてみれば、いい経験をさせてもらっているのやもしれん。少なくとも、人生の終わり方を見せてもらっている。どんなにみっともなくとも、人の目を気にしている余裕はない。そして、自分自身をどう終わらせるか... これに答えを見つけなければ... 見つけられずに人生を終えそうだけど... 美しく歳をとるなんて、夢のまた夢!

ついでに...
昨年の真夏、一家揃って新型コロナにやられた。みんな 39 度以上の熱が出て、婆ヤは血を吐いて意識を失う。とはいえ、全員分の救急車を呼ぶわけにもいかず、一家揃って死ぬのもいいかと思ったりもした。意識は朦朧とし、不安もなく、そのまま天国へ行けそうな。婆ヤのベッドは血の海に。爺ヤのベッドはウンコの海に。おいらは炎天下に 39 度の熱で、布団の処分に、ベッドメイキングに... そんな地獄も、一週間で過ぎ去り、今では笑い話。
三回のワクチンが効いたのか。おいら一人なら、ちょっいと熱の高い風邪のレベルであった。ただ、後遺症か、御老体は二人とも足取りが悪く、パーキンソン病の症状も顕著に。
心理学によると、笑うと心身ともに良好になるというので、御老体をくすぐったりしているところ。ほんま、笑ってないとやってられんわ...

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