2024-03-24

"ビッグ・クエスチョン" Stephen W. Hawking

Big Question !
古来、自然科学には、神託めいた究極の問い掛けがある。宇宙はいかにして誕生したのか?人類とは何者か?そして、どこから来、どこへ行くのか?それは、自らの存在に意味を求めてきた旅、いや、解釈をめぐる旅である。
車椅子の宇宙物理学者スティーヴン・ホーキングは、10 の難題が突きつける。

  • 神は存在するのか?
  • 宇宙はどのように始まったのか?
  • 宇宙には人間のほかにも知的生命が存在するのか?
  • 未来を予言することはできるのか?
  • ブラックホールの内部には何があるのか?
  • タイムトラベルは可能か?
  • 人間は地球で生きていくべきなのか?
  • 宇宙に植民地を建設するべきなのか?
  • 人工知能は人間より賢くなるか?
  • より良い未来のために何ができるか?

さて、この世界一有名な無神論者は、これらの問いにどう答えてくれるだろうか...
仮に、神は存在するとしよう。宇宙に始まりがあったとしよう。すると、宇宙の始まりの前には何があったのか?神は天地創造の前に何をなさっていたのか?本当に神は、そういう質問をする人間どものために、地獄を創ったのか?
永遠なるものは、創造されるものより完全である。だから、宇宙は永遠でなければならない!という主張も分からなくはない。
しかし、だ。宇宙は完全である必要があるのか?そもそも、完全とはなんだ?宇宙の在り方に、どんな意味があるというのか?神はなにゆえ、11 次元の M 理論のような複雑怪奇の空間をデザインしたのか?... などと問えば、たちまち地獄行きよ。不完全者は、地獄を見なければ、天国を見ることも叶わないと見える。ダンテが「神曲」で天国を描く前に、煉獄と地獄を描いて魅せたのは、必然だったのであろう...
尚、青木薫訳版(NHK出版)を手に取る。

「私に信仰はあるのだろうか?人はそれぞれ信じたいものを信じる自由があり、神は存在しない!というのが一番簡単な説明だというのが私の考えだ。宇宙を作った者はいないし、私たちの運命に指図する者もいない... おそらく天国は存在せず、死後の生もないだろう。死後の生を信じるのは希望的観測でしかないと思う... だが、私たちが生きつづけることには意味があり、生きて影響を及ぼすことにも、子どもたちに伝える遺伝子にも意味はある。一度きりの人生は、宇宙の大いなるデザインを味わうためにある。そしてそのことに、私はとても感謝している。」

宇宙を形作る要素は、三つあるという。一つは質量を持つ物質、二つはエネルギー、三つは空間である。それは、アインシュタインのあの有名な方程式でも記述される。
しかしながら、量子力学では、すべての存在に対存在が想定され、エネルギーの存在には負のエネルギーを、素粒子の存在には反物質なるものを持ち出さなければ説明がつかない。空間そのものが、負の遺産の貯蔵庫というわけか...

「不確定性原理は粒子だけでなく、電磁場や重力場などの『場』にも当てはまる。そのため、何もない空っぽの空間のように見えたとしても、場は厳密にゼロになることができない。なぜなら、場が厳密にゼロならば、きちんと定義された位置もきちんと定義された速度もゼロになるからだ。それでは不確定性原理が破れたことになる。そこで、場は厳密にゼロになることはできず、ある最小値のゆらぎを持たなければならない。それがいわゆる真空のゆらぎだ。真空のゆらぎは、突如現れては打ち消し合って消滅する、粒子と反粒子のペアと解釈することができる。」

ところで、生命とはなんであろう。それを定義づけられる根本原理とはなんであろう。一つの性質に、維持と複製がある。まさに遺伝子には、複製しようとする意志と増殖しようとする力が感じられる。DNA は、生命体の青写真を世代から世代へと伝えていく。
複製と増殖という性質に着目すれば、コンピュータウィルスもある種の生命と見なすことができるやもしれん。そもそも人間は、物理的には粒子の集合体でしかない。コンピュータもまた然り。コンピュータ科学は、マシンを生命化しようとしているかに見える。今日のインテリジェンスな AI の出現は、既にアラン・チューリングが提起した、マシンは意志を持ちうるか?という問題を具現化している。AI に支配された社会は、すべての人間を奴隷の地位に押し込め、人間には実現不可能と思われた真の平等社会を実現するやもしれん...

「スーパーインテリジェントな AI の到来は、人類に起こる最善のできごとになるか、または最悪なできごとになるかということだ。AI のほんとうの危険性は、それに悪意があるかどうかにではなく能力の高さにある。」

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