2024-04-07

"代数方程式とガロア理論" 中島匠一 著

群、環、体をめぐる旅。それは、線型空間をさまよう旅。そこにどんな御利益があるというのか。それを味わうには資格がいるらしい。ガロア理論に辿り着いたという資格が...
それでも、我武者羅にやっているうちに、薄っすらと見えてくる... ってこともある。御利益とまではいかなくとも、考え方だけでも味わえれば... まずは頭を空っぽにし、抽象数学とやらに触れてみる。
すると、数を計算する学問から、数の性質を味わう学問へ。数学は楽しい。数学の落ちこぼれでも、やはり楽しい。数学は哲学である... というのがおいらの持論である。

「ガロア対応の理論を創造し、それを代数方程式の解法に応用したのがガロアの仕事である。本書では『体の代数拡大に対する』本来のガロア理論だけを紹介してあるが、現代の数学ではガロア対応は単に代数拡大の理論だけにあるものではなく、もっと多くの対象について成り立つことがわかっている。それだけでなく、『(広い意味で)ガロア対応が成り立つこと』が数学における美しさの基準の一つになっているといってよいと思う。その意味でガロア理論は数学の理論の一つの雛形となっており、それが『ガロア理論は一つの思想である』という主張の内容(の一部)である。」

本書は、代数方程式とガロア理論について基本的なことをまとめた入門書。ガロアの動機は、代数方程式の解の公式を求めることに発している。
著者は主張する、「ガロア理論は代数学の華(はな)である」と...

さて、ここで抑えておきたいキーワードは、「代数拡大」「ガロア対応」

代数拡大とは...
ある数の体系が別の数の体系を代数的な性質で飲み込むといった現象をよく見かける。代数的な性質とは、二項演算において、加法や乗法、あるいは、交換法則や結合法則や分配法則が成り立ち、零元や単位元が存在するといったこと。
例えば、有理数体は四則演算において実数体に飲み込まれ、実数体もまた複素数体に飲み込まれる。
この性質を多項式に拡大すると、おいらの思考はたちまち破綻しちまう。そこで、物事を理解したければ、まずバラバラに分解して構成要素に還元せよ!という考えがある。整数を因数分解していけば素数に辿り着く。多項式で同じことをやれば、既約多項式に辿り着く。"Tn - a" といった形で。これを突破口に、代数拡大の理解を試みるのであった...

ガロア対応とは...
体を代数拡大する過程で、中間体というものが考えられる。集合論でいえば、部分集合のようなもの。これにガロア拡大を仮定してガロア群を考えると、これにも部分群が現れる。
すると、体の中間体とガロア群の部分群の間に、一対一の対応が見られるという。
すべての有限群は、ガロア群に含まれるというのか。少なくとも、その可能性があるというのか。うん~... 人を見たら泥棒と思え!というが、群を見たらガロア群と思え!というわけか。抽象レベルの高すぎる数学は、魔術と見分けがつかない...

「G を任意の有限群とする。このとき、Gal(L/K) = G をみたすガロア拡大 L/K が存在する。」

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