本書は、「エッセンシャル思考」の続編。前編では、何をやるかを伝授してくれた。ここでは、どうやるか、その事例を紹介してくれる。
コンセプトは、「努力を最小化して成果を最大化!」。極力無駄を省こうというわけだが、現実は厳しい。あまり無駄をなくすことに執着するのもどうであろう。極論を言えば、生きていること自体が無駄、人類の存在そのものが無駄という見方もできる。
また、物事は、あまり単純でもつまらない。難問に立ち向かうことに喜びを感じたり、我武者羅にやってみたいという衝動に駆られることもある。頑張って努力したことが自信につながることもあれば、我武者羅にやっているうちに、今まで見えなかったものが見えてくるってこともある。
とはいえ、アドレナリンジャンキーはゴメンだ!燃え尽き症候群もゴメンだ!
懸命な努力が成果につながることも事実だが、それには限界がある。無駄をなくすというより、脳にゆとりをもたせようという意味合いであろうか。仕事というより、趣味のような生き方を!無駄から学べれば、無駄ではなくなる。
本書も、失敗から多くを学べるので第一歩を気軽に踏み出そう... 失敗なくして習得なし... と励ましてくれる。どんなに優れた書き手でも、言葉ですべてを言い尽くすことは不可能であろう。その奥に、バランス感覚と中庸の哲学が読み取れる。あまり力まず、肩の力を抜いて、人生を謳歌しよう... これがコンセプトだと解している。
古くから人生論に「ビッグロックの法則」が囁かれてきた。器に小さな石から入れると、大きな石が入らなくなる、優先すべきものを考えよう... まさに、そんな教訓を物語ってくれる。
尚、高橋璃子訳版(かんき出版)を手に取る。
「わたしのくびきは負いやすく、わたしの荷は軽い」
... マタイ福音書、11章30節
ポイントは三つ...
- エフォートレスな精神... 余裕のマインドを手に入れ、難易度を下げることに抵抗しない。
- エフォートレスな行動... 最も効率のよいポイントで実行する。
- エフォートレスな仕組み... 行動パターンを自動化し、成果が勝手についてくる仕掛けをこしらえる。
アジャイル開発は、無駄をなくし、難解な部分を簡略化する戦略だが、エフォートレス思考は、この戦略に適合しそうである。
エフォートレスな仕組みでは自動化戦略を物語り、直線的な、直接的な成果よりも、累積的な成果を求める。この自動化を、おいらは習慣化と解す。累積的な成果とは、小さな努力の繰り返し。アリストテレスは、こんな言葉を残した。「人は繰り返し行うことの集大成である。それゆえ優秀さとは、行為でなく習慣である。」と...
認知心理学に「知覚的負荷」という概念があるそうな。
ソーシャルメディアが荒れ狂う社会では、余計な知覚を捨てることはすこぶる難しい。シンプルに考え、シンプルに行動するには、余計な情報を捨て去った方が幸せになれそうだ。
努力の価値が過大評価されているのも事実。成功するために心身を酷使して働かなければならないというのは、社会の集団幻覚か。現代人は、なにかと多忙だ。おまけに、慢性的な睡眠不足ときた。そして、すぐに結論に飛びつく。現代人の多くは、人生のリズムを集団の中で乱している。しかも、自ら...
「不運な出来事が起こったとき、それをあきらめて受け流すのは難しい。どうしても不満や怒りが湧いてくる。不満を言うのは簡単だ。あまりに簡単なので、多くの人は不平不満を言うのが日常になっている。... 不満をぶちまけるのは、一種の快感だ。ソーシャルメディアを見れば、ありとあらゆる不満が並んでいる。みんなが攻撃的になっている。巻き込まれまいとしても、知らず知らずに影響を受けてしまう。」
脳科学や心理学によると、「今」として体験される時間は約 2.5 秒だそうな。人生は、2.5 秒の繰り返しというわけか。この短い時間に、スマホを置き、ブラウザを閉じ、深呼吸することができる。この 2.5 秒をモノにして、最初の一歩を有利に踏み出そう!というわけか...
「難しいのは、聞くことではない。聞きながらその他のことを考えないことだ。難しいのは、その場にいることではない。そこにいながら過去の出来事や未来の予定に気を取られないことだ。難しいのは、何かを見ることではない。雑多な情報を無視して、見るべきものだけを見ることだ。」
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