2026-10-04

"初等整数論" 遠山啓 著

この手の書を、幾度手に取ってきたであろう...
もう中身は分かっている。筋書きも分かっている。応用数学で赤点だった落ちこぼれには、純粋数学こそ心の拠り所。人生、すごろくが如し!またもや振り出しに戻る。原点回帰といえば聞こえはいいが、これもある種の依存症か...
そして今、遠山先生版を手に取る。

整数論は、言うまでもなく整数を研究する学問分野。だが、その思考プロセスとなると、整数の体系をはるかに超える。数学者たちの関心事は、数(かず)そのものではなく、その性質を巡るものへと移ってきた。性質とは、算術によって解がどの系に属すかということ。数学の基本原理は、単純な算術規則に看取られている。
例えば、自然数は減法や除法によって自然数の系にとどまることができない。算術によって系が閉じられない現象は、数の体系を自然数から、整数、有理数、実数、複素数へと拡張させてきた。

さらに、性質を巡る旅は、結合法則や交換法則が成り立つか、あるいは単位元や逆元を持つか、といった視点へ移り、群、環、体といった高級な体系を編み出した。
さらにさらに、性質を巡る旅は多項式までも飲み込み、整数の正体を暴くために因数分解するように、多項式もまた素となる成分で分解を試みる。
何事も正体を知りたければ、バラバラにして構成要素へ還元せよ!物理学の還元主義は、数学とも相性がよいと見える。人類の抽象化への野望は、とどまることを知らず、自己の実体までも分裂させちまうのか...

整数を巡る旅は、集合論と相性がいい。本書の筋立ては...
まず、約数や倍数の集合に注目し、素因数分解を利用した最大公約数と最小公倍数の求め方に触れ、素数を標的に定める。
ちなみに、素因数分解を避けて最大公約数を求める方法に互除法もあるが、それを尻目に...
素数ってやつは、それが無限に存在することが「ユークリッド原論」にエレガントな証明が記される。しかしながら、その正体を知ろうとすれば、素となる存在ほど厄介なものはない。

次に、整数の最も単純な性質である大小関係を見る。
これを直線上に並べるのが自然な見方だが、円環上に配列すると循環性が見て取れる。算術では合同式、すなわちモジュロ演算と結びつき、集合論では巡回群が...
こうした幾何学的な考察が、反射律、推移律、対称律といった風景を見せてくれる。

そして、初等整数論の最高峰と目されるのが、「2次剰余の相互法則」だという。
それは、2つの素数 p, q で構成される分数に関する法則である。
但し、p, q は 2 以外の素数。

( q
p
) ( p
q
)  =  (-1)(p-1)/2・(q-1)/2

( 2
p
)  =  (-1)(p2-1)/8

( -1
p
)  =  (-1)(p-1)/2

さらに、実践的な見方として、連分数による近似法を見る。

「ωを無理数であるとすると、任意の正のεに対して、
  |ω - b/a|  <  ε
となる分数 b/a が必ず発見できる。これは有理数による無理数の近似である。」

精密な近似を得るには、いかに分母をきめ細かく取るか。ここに、黄金比やフィボナッチ数列との結びつきを見る。