今宵のアル中ハイマーは機嫌が悪いぜ!よって書評も荒れるのだ。なぜかって?そこにあったはずのグレンリベットが無くなっているのだ。そして、ドスの利いた声で鏡に向かって絡むのである。
「犯人は、てめえーだろう!証拠は挙がってんだ!顔色が赤いぜ!」
本書は2005年6月初版だから、従来のマネジメントの書籍に比べてもそれほど古くもない。しかし、真新しく感じるものがない。随分昔からあるマネジメント論が並べられているだけである。
本書は大会社のお偉いさんが推薦している。お偉い方々というのは忙しいから、マネジメントの本なんてじっくり読む時間がないのだろう。そういう意味では手頃な本なのかもしれない。
「ブルー・オーシャン」という言葉は心地よい響きがある。カバーの色も青く落ち着いている。更に、サブタイトルには「競争のない世界を創造する」とある。何か別世界へでも導いてくれるようで、宗教の香りさえする。アル中ハイマーは、酒の醸し出す香りのごとく、つい雰囲気に惑わされるのであった。
ブルー・オーシャン戦略とは、このように定義している。
「競争のない市場空間を生み出して競争を無意味にする。縮小しがちな既存需要を分け合うのではなく、競合他社との比較を行うものでもない。需要を押し上げて競争から抜け出すことを狙いとする。競争を前提とした戦略理論と一線を画す。」
既存の需要が形成される市場競争の世界を「レッド・オーシャン」、新しい市場空間を開拓し競争を避ける世界を「ブルー・オーシャン」と呼んでいる。ここだけ読むと、かなり期待感が募る。
レッド・オーシャンは、競争の原理が働き、その戦略は兵法の影響が色濃く、「領土が限られているため、敵を打ち負かさないと繁栄できない。」と表現している。
「競争のない新しい市場空間を想像できない。供給が需要を上回っている世界では進展がない。コストか品質でしか他社を上回ろうとしない企業群の世界である。この世界で成長できても単に運が良いだけである。20世紀の戦略論、マネジメント論の大多数がこの世界を前提としたものである。」
やや反論もあるが、新戦略論がどう打開するのだろう?もう少し読み進めてみよう。
永遠の「エクセレント・カンパニー」や「ビジョナリー・カンパニー」は存在しないと主張する。おいらは「エクセレント・カンパニー」Thomas J. Peters & Robert H. Waterman著は読んでいるか記憶にない。「ビジョナリー・カンパニー」James C. Collins著も読んだ記憶がないが形跡がある。なぜか本棚に並んでいる。
ブルー・オーシャンは、以下のように論じている。
「競合他社とのベンチマークを行わず、従来とは異なる戦略ロジックに従う。これを"バリュー・イノベーション"という言う。価値と革新が重んじられる。従来の競争市場では、価値とコストはトレードオフの関係にある。この前提から抜け出し、差別化と低コストを同時に実現しようとする。新しい需要を掘り起こす。ブルー・オーシャンを創造する体系的方法は、なじみのあるデータを従来と別の角度から眺めるだけである。」
- 代替産業どうしの狭間には往々にしてバリュー・イノベーションの機会がある。
- 見落としていた買い手を見つけ出す。
- 往々にして補間材や補間サービスには潜在的な価値が秘められる。トータルソリューションを提示する。
- 従来志向は、価格や機能に訴える業界と、反対に感性に訴える業界と2つに分かれる傾向にあるが、一方で決まるほど割り切れる例はまれである。
- 企業は、結果的に「何を期待すべきか」という点について買い手を啓蒙してきたが、顧客の立場に立たなければならない。
「自分の目で現場を見る」一見当たり前だが、外部委託する経営者はよく報じられているのは嘆かわしい。間接的な報告を受けるなどは、当然のようになされている。一貫性のない戦略、矛盾した戦略は職能別の縦割りが強い企業によく見られるのである。
本書は「ブルー・オーシャン」と「レッド・オーシャン」という言葉で新しい戦略と従来型の競争戦略を切り離して論じられている。しかし、新たな市場空間を見出すということはアイデア競争と考えることができるし、体力競争から、知的競争に置き換わっただけのことのように思える。言葉は新しく聞こえるのだが、なんら真新しい戦略とは思えないのである。そもそも境界線を引く必要があるのだろうか?大企業とは、このように戦略論を分けて論じないと発想転換ができないような頑固な組織なのだろうか?
ピーター・ドラッカーによると、大企業にも意外と起業家精神がありイノベーションを遂げてきた。むしろ中小企業に起業家精神の無い大企業体質を持つ危険性が高いと言う。
今まで見向きもされなかった顧客層を開拓し新しいマーケッティングを展開するためには従来の常識を転換する必要があると語られているが、古くから歴史的に語られていることである。
学者というのは、新しい言葉を創出し、専門用語を流行らせようとすることを好むようだ。現場では既に無意識に実践されている状況をよく見かける。
本書を売るためのマーケッティング戦略と考えれば、タイトルの設定が絶妙である。おいらは、見事に戦略に引っかかって買ってしまった。だからと言って嘆きはしない。全く当たり前のことが書かれているように思えるが、人間というのは、当たり前と決めつけていることが意外と分かっていないものである。分かっているつもりというのは危険な領域に陥るかもしれない。
本書で紹介されるマーケッティング戦略の手法は、いろいろな本で見かけてきた。そうしたものを思い出し頭を整理する役割にはなるのである。こうして、アル中ハイマーは無理やり理屈をつけて、自らを幸せな領域へと導くのである。
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