今年2008年は、日本天文学会の創立100周年だそうな。その記念に刊行されたのが「シリーズ現代の天文学」全17巻である。いや、まだ7巻しか刊行されていない。第1巻だけ読んだ時は、なかなかおもしろいので、全巻揃えて17記事を掲載しようかとも思っていた。しかし、第1巻以外は難しい。アル中ハイマーにはお茶を濁すことぐらいしかできない。
天文学の書籍といえば、カール・セーガン著の「COSMOS」を思い出す。学生時代、どこぞの放送局が特番でやっていたのに魅せられて買った。本棚を探してみると、おっー!あるではないか。てっきり古本屋行きだと思っていたが奇跡である。1980年刊行!そんなに昔なんだ。アホな頭脳を顧みず宇宙物理学やらに夢を描いていた時代である。当時、アル中ハイマーは高台に住んでいた。街が一望でき、夜景が綺麗なのが自慢だった。ただ、幼稚園の遠足コースでもあり、雪が降ると動けないので馬鹿にもされた。妙に脚力があったのは毎日登山していたからだろうか?深夜、天体観測と称して友人の望遠鏡を持ち込んで遊んだものだ。今思えば、近所の住民から避けられていたような気がする。「のぞき」と間違えられたのかもしれない。徹夜で盛り上がり、カップ麺がうまかったのを思い出す。定番は「赤いきつね」と「緑のたぬき」だった。当時を思い出して喰いたくなった。記事を書く前にちょいとコンビニへ行ってこよう。
天文学のテーマといえば「人類とは何者か?どこからきたのか?どこへ行くのか?」第1巻は、この疑問に対する答えを探ろうとした人類の願望を語り、シリーズの序章の位置付けにある。天文学の意義、哲学的な宇宙観から始まり、膨張宇宙のビックバンへと、観測と想像の歴史を振り返る。科学は宗教の影響を受けた歴史がある。宗教的立場は、主張の異なるものを異端宗教と考える。宗教が道徳を説くと主張する宗派ほど、紛争がお好きなようだ。どの主張も正統性に基づいていると信じているから質が悪い。そして、科学も一つの異端宗教と考えられた。地動説を主張したガリレオは宗教裁判にかけられた。主張するのは勝手だが、なにも押し付けなくても。これが神の創造物である人間の正体か?神も随分と罪なことをなさる。と、独り言は置いといて、アル中ハイマーの疑問に合わせて本書を追ってみよう。
1. 宇宙の起源とは?
宇宙は時刻ゼロに、物質、エネルギー密度が無限大に発散した状態から始まる。無からの創生である。何らかの方法で極微の時空さえ作れば、インフレーション理論によってビックバン宇宙へと発展する可能性があるという。このインフレーション理論、酔っ払いには、いまいちよくわからない。物質のエネルギーは運動エネルギーと位置エネルギーの合計である。これは物理学を専攻すれば習う基本法則である。つまり、運動しなければ全てが位置エネルギーというわけだ。ところが、量子論では、どんなに運動を小さくしてもこれ以上小さくできない運動エネルギーが残るという。この最低状態の運動をゼロ点振動と呼ぶ。無とは、体積ゼロであるから全エネルギーはゼロ、時空の大きさもゼロのはずだが、量子論的にはゆらぎが存在する。これがゼロ点振動のエネルギーというわけだ。この無から虚時間に量子的ゆらぎが生じ、ゼロエネルギーが膨張して、実時間の世界を創る?とかいう説明がなされる。虚時間で膨張したエネルギー反応が、その反動で実時間に飛び出して、膨張を続けるのが宇宙創生モデルである。やっぱり酒がないとアル中ハイマーには解釈が難しい。スコッチでも飲んで体を揺らすことにしよう。
2. 天体までの距離はなんで分かるの?
本書でも天体を知るには距離を調べることが重要であるが、難問であると語られる。「宇宙の距離はしご」という言葉で紹介されるが、計測方法には全ての天体に応用できる測定法がないようだ。よって、近傍から遠方へと手法をつないでいく。簡単にそのステップを追ってみよう。
(ステップ1: 太陽までの距離)
惑星(水星、金星、火星)までの距離をレーダー法により測定し、ケプラーの第3法則「惑星の公転周期の2乗は、惑星の軌道半径の3乗に比例する」を用いる。惑星の軌道半径と地球の軌道半径の比は、惑星の公転周期と地球の公転周期の比から求まるようだ。ちなみに、太陽までの距離を1天文単位(AU)と呼ぶらしい。
(ステップ2:太陽近傍の星までの距離)
年周視差。よく知られる三角測量である。離れた2点において、別々に見える方向の角度を計測するのだが、地球内の2点では距離が近すぎる。よって、地球が移動する場所から2点を選ぶ。
(ステップ3:標準光源法による近傍銀河の測定)
「宇宙の距離はしご」の基本であり、既知である天体の真の明るさを基にして、天体の見かけの明るさを測定することにより距離を求める。これが標準光源法である。見かけの明るさは、真の明るさに対して、距離の2乗に反比例して暗くなっていく。よって、見かけの明るさと真の明るさが分かれば距離が求まる。
(ステップ4:遠方銀河までの距離)
ある明るさの天体がどれくらいの個数存在するかを表す関数を光度関数という。この光度関数がガウス関数で近似され、そのピークの明るさがどの銀河の球状星団でもほぼ一定であることがわかっているらしい。このピークとなる明るさを標準光源として用いる。
「宇宙のはしご」とは、なんとも夢心地でええ感じである。夜の社交場をはしごすると店間距離が求められるが、千鳥足というゆらぎによって誤差は計り知れない。
3. 物質の根源とは?
元素で一つの章をさいてくれるのは、学生時代の化学を思い出させてくれてうれしい。昔、化学で落ちこぼれた原因に、安定元素と放射性元素の存在がある。永遠に安定しつづけるとはどういうことか?宇宙がビックバンから発生し、それが永遠とは矛盾しないのか?なぜ、特有の寿命を持ち、いずれ放射線を放出して他の元素に移り変わるものがあるのか?核子の質量が小さければ、それだけ安定エネルギーは小さくてすむ。とはいえ質量は存在する。エネルギーは尽きないのだろうか?
本書は、単独の中性子が存在し続けるために必要なエネルギーがいかに大きいかを教えてくれる。軽い核種から核融合により重い核種に変化する。核反応の前後で質量差に相当するエネルギーが解放される。核融合反応に必要な条件として、この核種によるエネルギー差に加えて、原子核内に存在する電荷の間で引き合う電気的力、クーロン力を越える(クーロン障壁)だけの運動エネルギーを持たなければならないという。おいらは、高温にすれば物質中の原子核が互いに衝突し合い熱エネルギーが発散し、これがクーロン障壁を超えた時に核反応を起こすのだろうぐらいにしか思っていない。クーロン障壁を超える熱エネルギーが必要なのかと思えば、そうでもないらしい。クーロン障壁を量子力学的な効果で透過する(トンネル効果)確率がどのくらい大きいかが問題であるという。実際は、平均の熱エネルギーがクーロン障壁よりずっと低いエネルギーで、二つの原子核がトンネル効果によってさらに近づいた時に核融合が起きるらしい。
4. 太陽の熱源は?なぜ明るさを保てるのか?
天文学で、アル中ハイマーが、最初にぶつかった疑問である。石炭や石油などの化石燃料や、重力エネルギーでは、46億年にわたって太陽の明るさを維持できない。1950年代、太陽の中心部で、高温、高密度環境の元で、熱核融合反応によってエネルギーが供給されていることが明らかになった。水素の原子核が反応してヘリウム原子核と陽子ができる。この時、質量欠損に相当するエネルギーが発生する。これが太陽の熱源である。現在まで太陽を輝かすために消費した水素量は、太陽の持つ水素量のわずか1%に過ぎないという。また、太陽中心核にある水素量から見積もって、今後50億年程度は輝き続けられるようだ。
5. 地球的惑星は存在するか?
天文学者は、数々の観測法によって、地球型惑星の探求を続けてきた。ただ、いずれの方法も間接的な観測であり惑星そのものの光をとらえたわけではない。重力効果や影でとらえているに過ぎないことを紹介してくれる。間接観測によって発見されたものは、質量も大きく、地球規模の小質量の惑星を検出するには、もう少し時間がかかりそうだ。直接観測こそ、これからの大きな課題であろう。観測には、ロケット探索という手段もあるが、もっとも近い恒星ですら到達するのに1万年から10万年かかる。当面は天文学的な観測の方が現実的である。地球のエネルギー史は、地球誕生時にそのほとんどが決まっている。せめて、それまでは地球を大切にして、人類文明を存続させてもらいたい。
6. 生命の進化に必要な条件とは?
しばしば地球は水惑星と言われるが、実際には地球が含む水は質量の0.1%程度である。しかし、地表の3分の2が海で覆われ、水の及ぼす影響が大きいのも事実だろう。そもそも液体状態は、きわめて限られた温度と圧力の範囲だけで存在でき、水に限らず表面に液体が存在する天体自体が珍しい。これらの条件がなぜ成り立つのかは、まだ不明のようだ。太陽からの距離が絶妙であり、地球の大きさも適度である。地球の自転軸傾斜は数万年で約1度変化し、軌道離心率も約10万年で変化している。これが原因で、数万年から10万年で氷河期と間氷期をくりかえしている。磁気圏が宇宙線を地表に到達できないようにしているのも必要条件である。などなど、地球環境はあらゆる偶発的な条件が重なっているように見える。なんとなく神の存在を信じるのもわからなくはない。アル中ハイマーも地球の自転の影響を体で感じている。夜の社交場をぐるぐる回るのは、北半球に住んでいるからであり、コリオリの力が働いているに違いない。南半球に移住すれば、きっと昼間に図書館めぐりをしていることだろう。また、店のゲートを通過する度に体温が上昇するのは、地球上に流動するアルコール成分の影響で、一種のエルニーニョ現象と考えている。
2008-01-05
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