2010-10-03

"イリアス(上/下)" ホメロス 著

人類の歴史というものは、確かな記録が残されなければ神話化してしまうところがある。その創成が自らの起源に関わるとなると、よりいっそう尊厳ならしめ、奇妙な擬人化によって神々に帰する。太古の時代ともなると、それが人間業なのか神業なのかも区別がつかない。肯定も否定もできないとなれば、「誇大妄想の原理」が働き、ますます想像を膨らませる。現在ですら、企業の創始者を崇拝したりするのだから...

時代は、トロイア戦争末期。トロイア戦争は、小アジアのトロイアへ、ギリシアのアカイア人が遠征したギリシア神話上の戦争である。登場人物が、主神ゼウスをはじめとするオリュンポス十二神たちや、その子孫である人間たちであることから、想像上の物語であることは間違いない。だが、神々の人間味溢れた行動は実話を元にしていると言っても否定はできないだろう。実際に、ギリシア人が遠征したという証拠もなければ、トロイア人がどういう民族だったかも分からないようだし、ホメロスだってが架空の人物とする説もある。ただ、考古学的には、ギリシアとトロイアの間で交易があったことは出土品などからも明らかだそうな。いずれにせよ、ホメロスの大作が、単なる文学作品なのか、歴史と結びつく何かがあるのかは、想像するしかないわけだが...アッティカ王の時代では、神々の伝説と重ねながら権力を誇示したことだろう。その慣習がトロイア戦記に現れても不思議ではない。こうして見ると、歴史と文学の境界線も微妙であることに気づかされる。
ホメロスの叙事詩「イリアス」や「オデュッセイア」は、トロイア伝説を取材した物語である。現代感覚からするとかなり胡散臭さが残るが、そこが神話の良い(酔い)ところ。ヘラクレス伝説を受け継ぐ勇士たちが、神々の伝説で煽られる様子は、わざとらしくもあり、こそばゆくもある。歴史叙述というものは、その時代に生きた取材者たちの主観的解釈を、後に歴史的に評価されて構築されていくものであろう。後のヘロドトスやトゥキュディデスなどの歴史の大家たちが、ホメロスの情緒的な詩(うた)を読みながら、客観的視点を取り入れて歴史叙述というものを進化させていったのだろう...などと想像しながら読んでいる。

「イリアス」とは、「イリオス(またはイリオン)の歌」という意味がある。すなわち、聖都イリオスの城をめぐる攻防戦を歌った英雄叙事詩である。ちなみに、訳者松平千秋氏の解説によると、古代ギリシアの叙事詩の起源は、ミケーネ時代に遡ると推察されるという。ミケーネ文明は、青銅器時代の後期に当たる。
ところで、叙事詩というと、「歌い物」をイメージしてしまう。だが、本書には音律があるわけでもなければ、詩的効果もあまり感じられない。神々の語りには比喩的な表現も多彩で、第一歌から第二十四歌という長大な構成ではあるのだが、むしろ緻密な長篇物語と言った方がいい。ホメロスの時代、叙事詩は「歌い物」から「語り物」へと変質していったのだろうか?いや、それも翻訳の効果で、当時の詩家たちが原語で朗読すれば「歌い物」になるのかもしれない。
言語は伝達手段として音から始まり、英雄伝説は音韻や音律を交えて歌い物として伝えられたのだろう。かつて、歴史はリズムによって伝えられた時代があったのだろう。後にパピルスのような記録媒体が登場すると、物語は人間の記憶力から解放され、長篇の雄大な物語が誕生する。ここには、歴史学における記録媒体の原理のようなものを見せてくれているような気がする。

神話という現象は、多くの国々や民族で見られるからおもしろい。それも、だいたい神は一人ではないようだ。神々は、自由に風を吹かし、嵐を呼び、疫病などの禍をもたらすといった神秘的で超人的な力を発揮しながら、戦争の神、愛の神、海の神、山の神など様々な特徴や機能を持つ。同時に、長所と短所を持ち合わせ、神々同士で憎しみあったり、愛し合ったりと人間味溢れた描写が多い。おまけに、人間の姿を借りて、いつでも自由に現世に出没し、人間たちを惑わす。神話の時代の神は、宗教的な神とは違って、かつて人間だったものがあの世から到来した御先祖様のような親和性を与える。
本書で描写されるオリュンポスの神々も、主神ゼウスの目を掠めて様々な画策を仕掛けたり、色仕掛けをしたりと、完全なる神からは程遠い。絶対的な支配力を持つ主神ゼウスにしても全能ではあるが、完全な精神の持ち主とも言えない。所詮、人間が記すもので完全な精神の持ち主を表わすことなどできるはずもないが...もしかしたら、古代ヘラスの地に、人類の歴史には登場しないゼウスに相当する絶対的な国王が実在して、それが神話化しただけのことかもしれない。
ところで、いつ頃から、神は宗教的な絶対的な地位を確立したのだろうか?人々は、必ず救済してくれるに違いないと、絶対神なる存在を夢想してきた。そして、思想の天才たちの出現が、いつのまにか神格化され、信仰心を最高潮にまで崇める。不完全なる多くの神々よりも、完全なる一つの神の方が分かりやすく洗脳力が強い。一神教の威力は絶大である。神話の時代では、まだ人々は神々と戯れていた。長所や短所を兼ね備えた神々が共存するから、趣味を語るように好みの神が語れて、賑やかで楽しい。絶対神なる一つの存在を規定するから、必要以上に崇められ、強迫観念に掻き立てられ、気楽には語れなくなる。そして、自分の信仰する神が罵倒された時に、宗教的な怨恨を持つことになる。宗教の発明が、異教徒の神を蔑み、いがみ合う結果になろうとは...

1. 伝ヘロドトス作「ホメロス伝」
末巻に「ホメロス伝」が付録される。これは、ローマ帝政時代に書かれたものと推測されるらしい。つまり、作り話か?しかも、本人はヘロドトスと称して「できるだけ正確に」などと書いて、すましている。ちなみに、「正確な(アトレケース)」はヘロドトスが最も愛用した語だそうな。
「ホメロス伝」は、ヘロドトスの著書「歴史」と同じイオニア方言で書かれているという。冒頭から、「ハリカルナッソス出身のヘロドトスがホメロスの生い立ちと生涯を記す」と宣言しているあたりは、わざとらしい。
この伝記によると...
ホメロスが生きた時代は、アイオリス地方の古都キュメが建設された時で、ヘラス(ギリシア)各地から様々な部族がイオニア地方に移住してきたという。ホメロスはキュメから南のスミュルナという町で生まれたそうな。当初、メレスの生まれという意味で、メレシゲネスと名付けられたという。生まれつき詩に優れた才能を持っていて、学塾の教師をしていた。知識を広めようと旅に出て、オデュセウスに関する伝承などを聞き知ったとされる。だが、旅の途中コロポンあたりで失明する。盲目となって、スミュルナに帰国したメレシゲネスは詩作に専念する。その後、キュメに移り住み、神々への讃歌を披露して人々に絶賛されたという。キュメの方言で、盲人のことを「ホメロス」と言うらしい。盲人ということで、町の評議会の評判は悪かった。そこで、キュメ人に対して、今後高名な詩人が生まれぬように呪いをかけ、ポカイアへ移住する。
ホメロスは、人の集まる場所で、坐を構えて朗誦しながら生計を立てる。そして、多くの詩作の中で、世話を受けた人々を、恩返しの意味で物語に登場させているという。町々で出会った光景の写実が、現実性や親和性といったものを醸し出すのかもしれない。どんな嘘っぱちでも、具体的な地名や事柄を持ち出すと、真実味を増すものではあるが。ちなみに、ホメロスが生まれたのは、トロイア戦争の168年後のことだったという。

2. 本物語の前提「女神コンテスト」
女神テティスとペレウスの結婚式ですべての神々が招かれたが、唯一争いの女神エリスだけは招かれなかった。エリスは怒り、皮肉をこめて祝宴に「最も美しい女神に与える」と黄金の林檎を投げ入れた。すると、オリュンポスの女神たちは、それは自分のことだと主張した。中でもゼウスの妻ヘレ、ゼウスの娘アテネとアプロディテの3女神が譲らない。ゼウスは、3女神に「最も美しいのは誰か?」という判定を迫られる。争いに巻き込まれたくないゼウスは、その判定をトロイア王プリアモスの息子パリス(アレクサンドロス)に委ねた。いわゆる「パリスの審判」である。ヘラは「全アジアの支配権」、アテネは「あらゆる戦いにおける勝利と知恵」、アプロディテは「人間界で最も美しい女」と、それぞれ条件を出してパリスを誘惑する。そして、パリスはアプロディテの条件に乗る。だが、人間界で最も美しい女は、スパルタ王メネラオスの妃ヘレネであった。パリスはヘレネを奪い取る。その奪還のためにアカイア人はトロイア討伐の兵を上げる。その統帥はメネラオスの兄アガメムノン。容姿は並外れて美しいパリスの浅はかな行為が、トロイア国に大きな禍をもたらすことになる。

3. イリアス物語
主な登場人物を挙げると切りがない。とりあえず、アキレス腱の語源である俊足の勇士アキレウス、その親友パトロクロス、トロイア軍の勇士ヘクトルの3人を挙げておこうか。登場する人々が、オリュンポス十二神たちに操られながら、物語は進行する。
アカイア軍の統帥アガメムノンとアキレウスの間には、かつてから確執があった。戦利品をめぐって、アキレウスが受けた恩賞の女をアガメムノンが奪ったからである。怒ったアキレウスはアカイア軍から離脱し、名誉回復を母テティスに訴える。そして、テティスがゼウスに嘆願すると、ゼウスはいずれアキレウスに名誉を与えることを約束する。ちなみに、テティスは、海底に住むネレウスの姫神たち(ネレイデス)の一人。
この約束が、トロイア軍の大将ヘクトルを剛勇に育て、そのライバルをアキレウスが討つというシナリオを作り上げることになる。そして、ヘクトルが、アキレウスの親友である剛勇パトロクロスを討ち、その仇討ちというマカロニウエスタン風の復讐劇が展開されるのであった。

4. パリスとメネラオスの一騎討
ゼウスは、テティスの約束を果たすべく、まず、アガメムノンに惑わしの「夢」を送り、戦闘を再開させる。アガメムノンに味方にすべきアキレウスを怒らしたことを後悔させるために。トロイア軍とアカイア軍の両軍は、長期に渡って苦難を被り、一刻も早く引き分けで終わってほしいと願っていた。そこへ、トロイア軍のパリスが、自分と一騎討せよ!と挑発し、アカイア軍のメネラオスがその挑戦を受ける。一騎討によって、ヘレネとその財宝がどちらのものか一気に決しようというわけである。パリスは敗れるが、女神アプロディテに救われる。ヘクトルは、パリスの不甲斐なさに呆れる。アガメムノンはメネラオスの勝利を主張し、ヘレネと財宝の返還ならびに補償を要求して一旦休戦となる。
メネラオスにはゼウスの妻ヘレが味方している。ヘレはトロイア軍に肩入れするゼウスに怒って口論となる。このまま終戦となっては、ゼウスのシナリオが狂うので、トロイア側から休戦の誓約を破らせるように手配せよと命令する。さっそく、アテネが武将パンダロスをそそのかして、メネラオスに矢を射かけさせ負傷させる。これをきっかけに、トロイア軍には軍神アレスが、アカイア軍には女神アテネが後ろ盾になって激戦が再開される。

5. ディオメデスの奮戦
女神アテネの庇護の下に武将ディオメデスが無類の剛勇ぶりを発揮する。パンダロスを討ち、女神アプロディテの子アイネイアスを傷つけ、アプロディテにも傷を負わせる。これに荒れ狂った軍神アレスは、トロイア軍を立て直すために、四方を駆け巡る。アレスが後ろ盾になった将軍ヘクトルの強さは半端ではない。女神ヘレはアレスに腹を立て、ゼウスの了解を得て、人間にとっての厄介神アレスを懲らしめんとする。アテネが後ろ盾になったディオメデスがアレスに傷を負わせる。
軍神アレスはオリュンポスに逃げ帰り、ゼウスの叱責を受ける。「オリュンポスに住む神々の中で、お前ほどわしが憎いと思う者は他にはおらぬ。お前が好むのは、争い事、戦争、喧嘩ばかり。」と。ちなみに、ローマ神話では、軍神アレスはマルス(火星)に相当し、マルス神がトロイア人の末裔の娘を犯してできた子が、初代王ロームルスだったような...ローマ帝国は厄介神の子孫の国というわけか。

6. ヘクトルとアイアスの一騎討
ヘクトルは、オリュンボスの神々がパリスをトロイアの民に大きな禍として育てたと、パリスを叱責する。そして、トロイアの民を守るために立ち上がる。ヘクトルの戦意は凄まじく、今度はトロイア軍が優勢となる。トロイア軍の勝利を願うアポロンと、アカイア軍をひいきする女神アテネが合意して休戦とし、大ヘクトルと大アイアスが両軍を代表して一騎討をさせることにする。だが、勝敗の定まらぬうちに日没となり、両者は武具を交換して別れる。
ゼウスが神々が戦闘に介入することを禁ずると、トロイア軍の優勢が確定的となり、ヘクトルは遂にアカイア軍の船陣に迫る。ヘレとアテネは、密かにアカイア軍を助けようとするが、ゼウスに気づかれ叱責される。

7. ポセイダオンとヘレの策謀
非勢となって落胆したアガメムノンは、国へ引き上げることを主張するが、ディオメデスが反対する。ネストルは、アガメムノンが自分の非を認めて、他人の意見に耳を傾けるよう説き、アキレウスとの和解を勧める。アガメムノンはそれに従い、その旨を伝えるべく、ポイニクス、大アイアス、オデュッセウスを派遣して、勝利の暁には戦利品の分け前やトロイアの美女を選び取らせるなどの約束を伝える。しかし、アキレウスはアガメムノンへの怒りが収まらず、その申し出を拒絶する。
ゼウスの虚を衝いて、ポセイダオン(オリュンポス十二神の一柱ポセイドン)が、アカイア軍の応援に駆けつける。ゼウスとポセイダオンは家系が同じで両親も同じだが、ゼウスの方が生まれも早く、知恵も優れている。そこで、ポセイダオンは表立って助けるのを避け、ゼウスの目を盗みながらアカイア軍を激励した。ヘレが一策を案じ、ゼウスの姫アプロディテと「眠り」の神の協力で、色仕掛けでゼウスをイデ山上に眠らせる。その隙にポセイダオンがアカイア軍に活を入れる。ヘレは、勇猛ヘクトルを戦えぬようにし、トロイア軍を敗走へ追い込んだ。
目を覚ましたゼウスは、ヘレの謀略に気づき激怒する。そして、ポセイダオンを戦場から引き上げさせ、アポロンにヘクトルを再起させ援護せよと命令する。ヘクトルは死運を免れ、再び立ち上がる。

8. パトロクロスの奮戦
アカイア軍は、剛勇ディオメデスが矢を受け、槍の名手オデュッセウスとアガメムノンも槍に刺されて、劣勢に立たされている。アキレウス軍にも戦禍が及びそうな勢い。パトロクロスは、この様を見かねてアキレウスがただ見守るだけなら、武勇はかえって仇となるので、せめて自分だけでも出陣させてくれ!と嘆願する。アキレウスもアガメムノンへの怒りを収め、パトロクロスに出陣を許す。そして、アキレウスの武具を借り、ミュルミドネス勢を率いて戦場に向い、トロイア軍を撃退しさらに追撃する。パトロクロスは、ゼウスの子サルペドンを討ち、その屍をめぐって激戦となる。それを見かねたゼウスは、アポロンにサルペドンの屍を連れ戻して安らかに眠らせるように指示する。アポロンは、サルペドンの屍を連れ出し丁重に葬った。そして、アポロンは、誇り高きトロイア人の城はパトロクロスの手で落とす定めにはない、引き退れ!と凄まじい声で忠告する。アポロンによって戦意を奪われ、退いたパトロクロスは、エウポルボスの槍で傷を受ける。そこへ、ヘクトルが追い討ちをかけて止めを刺す。パトロクロスの遺体を守ってメネラオスが奮戦するが、パトロクロスの身に付けたアキレウスの武具は遂にヘクトルに奪われる。残された屍をめぐって激戦が続くが、女神アテネの助けもあって、辛うじてパトロクロスの遺体を確保する。

9. アキレウスの奮戦
親友パトロクロスの死を知らされたアキレウスは激しく悲しむ。そこに母テティスが現れ慰める。アキレウスの激しく悲しむ声に、海底に住むネレウスの姫神たち(ネレイデス)が集まる。アキレウスは、親友の死を悼んで絶食を続ける。周りの人々の説得も聞かずに。そこへ、アテネが神々の食物を与えて元気づける。テティスは我が子のために、名工ヘパイストスに新たな武具を造らせる。そして、アガメムノンの怨恨を断ち切って戦う決意をせよ!と説得する。アキレウスは、ヘクトルめの首と武具を取り戻すまでは、パトロクロスの葬儀はやらぬと決意する。
手傷を負ったアガメムノンがアキレウスを訪ね、両者は和解する。出陣するアキレウスに名馬クサントスが人語を語って、彼の死期の迫っていることを予言する。馬に人語を語らせたのは、女神ヘレであった。アキレウスは、死を覚悟した決意で臨む。
女神テミスは、正義や掟を護る神で、職能を司る職能もあったという。テミスは、オリュンポスの頂上から神々にゼウスの館に参集するように呼びかける。ゼウスは、ここから見物すると宣言し、神々に戦闘への介入を許す。アカイア軍には、ヘレ、ポセイダオン、アテネら、トロイア軍には、アポロン、アレス、アルテミスらが支援する。
アキレウスは、誰よりも勇将ヘクトルとの対決を望む。ヘクトルは、アキレウスの剛勇に劣ることを自覚しているが、所詮は神々のお膝の上にあること、力の劣る者が負けるとは限らないと言って、アキレウスと戦う。アポロンは、ヘクトルが危ないと見るや、すぐにさらって濃い霧の中に隠す。ヘクトルとアキレウスの対決は、アテネとアポロンがそれぞれ応援し物別れに終わる。アキレウスは勢いに乗るが、アポロンの謀略で、一旦はイリオス城から外れた場所へと誘い出される。それに気づいて、すぐさまヘクトルを追って三たび城のまわりを巡った後、一騎討に入りヘクトルを討ち取る。そして、遺体を車につけて走り廻り陵辱する。ヘクトルの両親と妻アンドロマケは嘆き、トロイア軍は町を挙げて悲しみに暮れる。

10. パトロクロスの葬送競技とヘクトルの遺体引取り
アキレウスとミュルミドネス勢は、パトロクロスの遺体を囲んでその死を悼む。その夜、アキレウスの枕元にパトロクロスの亡霊が現れ、火葬を督促する。アキレウスは、火葬を終えると、様々な賞品を賭けて葬送競技を催す。大アイアス、オデュッセウス、ディオメデスらの剛勇も競技に参加して盛況となる。競技の最後には、アキレウスが総帥アガメムノンの勝利を宣言して、今や彼への怒りが全く解消したことを示す。
アキレウスはヘクトルの遺体を傷つけることをやめない。神々もさすがに見かね、ゼウスは女神テティスに命じて、遺体を返すように説得させる。ゼウスの命にアキレウスも素直に従う。トロイア王プリアモスは、深夜アキレウスの陣屋を訪れ、息子ヘクトルの遺体を受け取り、トロイアでその葬儀が営まれ物語を終わる。

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