2021-10-17

SeeQVault を試すも、まるで実感なし...

BD レコーダ "SONY BDZ-ZW1700" の内蔵 HDD 1TB は、ちと寂しい。そろそろ枯渇気味だし...
そこで、外付けの USB HDD をメインに配置することに。内蔵 HDD をテンポラリ領域に位置づければ、1TB は贅沢な空間となる。
そして、SeeQVault 対応に目をつけてきた...

SeeQVault とは、録画した機器以外でも再生できるようにした技術で、記録データがメーカ依存から解放される仕掛け。ただ、完全に解放されるわけではなく、対応機器を揃えなければならないし、再生側の機器はともかく、記録側の機器は多少なり引きずられる。おまけに、4K 非対応。
また、LAN 録画などで、直接 SeeQVault 対応のストレージに記録できないので、一旦、内蔵 HDD に落としてからダビングすることになる。
4K 用ストレージを別に配置したり、用途で使い分けることになりそうか... などと考えていると、いまいち踏み込めずにいた。
しかし、試してみないことには始まらない。どうせ買うなら...

モノは、ELECOM ELD-QEN2060UBK...
容量は 6TB もあり、十年ぐらい枯渇で悩むことはなさそうだが、今度は、画質にこだわって圧迫されそうな。人間の贅沢に限りはない...
そして、BDZ-ZW1700 後部の USB 端子に接続して機器状況を確認すると、属性に "SeeQVault" のロゴ が刻印された。
ただ、それだけ!
本当に、SeeQVault が機能しているかって?そんなことは知らんよ。他の対応機器を持ってないし...

しかし考えてみると、電子機器が本当に規格通りに機能しているかなんて、信じるしかない。巷で騒がれるセキュリティの脆弱性対策にしても、個人情報の保護にしても、どれほどの信頼が置けるというのか。ユーザが管理できる範囲はますます狭まり、できることといえば、文句を垂れるのみ。アップデート信仰はますます浸透し、WUuu... の呪いがつきまとう。信じる者は救われる... の原理は、宗教が発明されて以来、変わらんよ。
ちなみに、WUuu... とは、Windows Update の略で、うなるように、うぅぅ... と発音する。




尚、BDZ-ZW1700 の取説によると、無線アンテナ部が右側にあるらしいので、電波干渉を避けて、左側上部に設置(写真)。

2021-10-10

"ギルドの系譜(上/下)" James Rollins 著

おいらにとって、読書が毒書となるジャンルがある。くつろぐための行為が、やたらと緊迫感を煽ってくる。そして、読了した瞬間のクタクタ感ときたら... これがたまらないときた。馬鹿は死ななきゃ治らんというが、依存症とはそうしたものだ。
ロリンズ小説は、その最たるもの。歴史と科学の狭間でもがき、事実とフィクションの狭間でもがき、知的探求の場面で思いっきり集中力を要請しておきながら、アクション場面では息抜きをさせてくれる。まるで、アメとムチ!
シグマフォース・シリーズに手を出すのは、これで八作目だが、まだまだ道のりは長い。しかし、もうリズムは分かっている。翻訳者桑田健氏のリズムも...


「ポーカーの名手は決して手札を明かさない。カードをしっかりと隠し、勝てるハンドを持っているのか、それともブラフをかけているのかを、対戦相手に悟られないようにする。それは作家も同じで、事実とフィクションとの境目を曖昧にする。しかし、作品の最後では、正直に白状して、ハンドをテーブルの上に広げ、真実の部分とそうでない部分を明らかにしたいと私は考えている。」
... ジェームズ・ロリンズ


原題 "Bloodline"... これは、陰謀をめぐる血統の物語である。
長い長い歴史を辿っても、陰謀論の絶えた時代は見当たらない。それは、いわば人間の本質。混沌とした社会にあって、あるパターンを見い出し、影で操る何者かを炙り出し、常に見えない存在に怯えながら生きていく。占いに取り憑かれ、運命論に身を投じるのも、何かのせいにすれば救われる、だたそれだけのこと...
暗躍してきた秘密結社の類いは枚挙にいとまがない。フリーメイソンに、テンプル騎士団に、グノーシス派に、イルミナティに、ユダヤ金融に... こうした組織は宗教色が強く、災いをもたらす場合は悪魔とみなされ、恩恵をもたらす場合は神聖視される。決まって彼らは、世界的な名門一族との結びつきが噂される。ロスチャイルド家に、ヴァンダービルト家に、ロックフェラー家に、ハースト家に、ケネディ家に...


「世界の各地で我々に対抗する存在として、統制のとれた冷酷な陰謀があります。その影響力の拡大のために、主として人目につかない手段が使用されています... 軍事、外交、情報、経済、科学、政治の力を組み合わせ、結束力が高く極めて効率的な仕組みが作られているのです。」
... ジョン・F・ケネディ


本物語では、悪名高きテンプル騎士団に米国大統領ギャントの一族が結びつく。言うまでもなく、大統領の名は架空だ。
そして、テロ組織ギルドが胎内に子を宿した大統領の娘を拉致した時、不老不死の遺伝子技術と、恒久の世界支配という野望が露わになる。
ちなみに、アメリカ合衆国史上、七月四日の独立記念日に息を引き取った大統領が三人いる。ジョン・アダムズに、トーマス・ジェファーソンに、ジェームズ・モンローである。そして今、四人目がライフルの照準器に...
「あなたには死んでいただく必要があります。大統領閣下!」


1. テンプル騎士団... 九人目の謎
十二世紀初め、九人の騎士は聖地へ巡礼の旅に出る者たちの保護を誓った。やがて富と権力を蓄積してヨーロッパ各地に拡散し、ついには法王や国王までも恐れる一大組織へと成長していく。
これに対抗するために、フランス国王とローマ法王は共謀し、異端信仰を告げて組織を解体。粛清後、多くの伝説が生まれた。失われた財宝の噂に、迫害から逃れて新大陸へ渡ったという説に、あるいは、厳重な保護のもとで今日も密かに存在し、世界を一変させる可能性を秘めた力を守り続けているとも...
あまり知られていない事実として、最初の九人全員が血縁や結婚によってつながったある一族の出身であったそうな。そのうち八人については、歴史的な文書に名前が記されているが、九人目については今もなお謎のままだという。なぜ、九人目の名前だけが記されていないのか?本物語では、それが女性だった可能性を匂わせる。当時の時代背景からして、女騎士の存在は秘密にされたとさ...
本拠地は、エルサレムの神殿の丘。ユダヤ最古の口伝律法ミシュナによると、ユダヤ人と見なされるためにはユダヤ人の母を持たなければならない。血統に父親は一切関係なく、ユダヤの伝統は女性の血筋を通してのみ後世に伝えられる。
そして、物語の主役は、女系ということに。大統領の座を奪って世界支配を目論む女の正体は?


2. 三重螺旋構造... 女性遺伝
大統領の娘は、ある不妊クリニックの手術によって妊娠した。精子のドナーはランク付けされる。容貌、IQ、病歴、民族など多くの基準によって。何をご所望かな!
ギルドが欲したのは胎児と、その遺伝的実験の成果である。遺伝情報といえば、DNA の二重螺旋構造がある。遺伝子工学の聖杯とでも言おうか。これに三つ目の鎖を加えると、Three Times Three の儀式が始まる。3x3 は、テンプル騎士団の九人目を意味するのか?
PNA 鎖を加えることによって、DNA の二重螺旋構造が持つすべての力を解き放ち、命の青写真が提供されるという。ゲノム学者たちは特定の遺伝子のスイッチを切ったり入れたりできる人工の鎖を生成することが可能になるとか。癌をブロックしたり、何百もの遺伝病を治療したり、寿命を延ばすことだって。そして、究極の目的は、不老不死!
PNA に好きなように遺伝コードを書き込み、受精卵に挿入すれば、もはや神が人間を進化させるなんてことはなくなる。この鎖は、生物学と科学技術とを融合させたサイバー遺伝学の産物か。いよいよ神が待ち望んだライバルの出現か!そう、悪魔の...
尚、コペンハーゲン大学の研究チームが、二本の DNA 鎖の間に PNA 鎖を挿入することに成功したのは事実だそうな。
「三重螺旋構造を持つ男性は、言ってみればラバと同じことだ。永遠に生きるかもしれないが、遺伝的には行き止まり... 男性の精子には本人の DNA の半分しか含まれていないが、女性の卵子には本人の DNA の半分のほかに、細胞質のすべてとそのゼリー状の細胞液の中にありとあらゆるものが含まれている。ミトコンドリア、細胞小器官、蛋白質... この場合は、PNA も。」
PNA 鎖を子孫へ伝えることができるのは女性の特権というわけか。なので、生まれてくる子供に、女の子をご所望ときた。
しかし、大統領の娘が生んだ子は、男の子だった。つまり、用済み!


3. 不死の人間は存在しうるのか?
現代の科学研究では、人間の寿命は百二十歳という説を見かける。だが、人間の寿命が延びるだけで、様々な弊害が生じている。人口過剰、飢饉、経済の停滞など。人間が死ぬのには意味がある。生への意欲や世代の活性化など。
不死の秘薬は、古代エジプトから伝えられてきた、いわば人類の夢。これが実現した社会とは、どんな社会であろうか。事故や災害で命を落とすことがあっても、寿命で命を失うことがなくなるとすれば、より命の尊さが感じられるだろうか。いや、死こそが尊いものとされるかも。希少価値が高くなるのは、経済の鉄則だ。そして、責任だけが、肥大化しそうな。人間ってやつは、誰かのせいにしながら生きていくのが得意ときた。それで、楽になれるのだから。すでに、「自己責任」という用語は、お前が悪い!という意味で使われている。それで、自殺願望を増殖させていくのか。
PNA ってやつは、寿命を延ばすだけでなく、人間を再起動する上でも役割を果たすという。それで、この世に不死の人間は存在しうるのか?との問いには...「もちろんだとも!」

2021-10-03

"ジェファーソンの密約(上/下)" James Rollins 著

読書という習慣が良いことかどうかは知らん。が、おいらにとって手を出してはならない毒書がある。仕事へ向かう気力を完全に封じ込め、朝までかっぱえびせん状態にするヤツらが... 酒瓶とグルになって...
推理小説には魔物が棲む。こいつが、おいらの読書人生の基本ジャンルなだけに、もう依存症!だからこそ、手を出してはならない...


ところで、老化や認知症に日没症候群というものがあると聞く。痴呆などの症状は夜に悪化する傾向があるとか。黄昏現象ってやつか。虫どもには灯りに集まる習性があるが、人間も光を失うと何かを求めて徘徊をはじめるのか。おいらの場合も衝動に駆られるのは、きまって日暮れ時ときた。Bar は 5 時から!と謳っている行付けもあるし...そして今、クタクタ感に浸りながら、じっと空き瓶を見る。昨晩、開けたばかりのグレンリベット18年が、朝の陽光を透けて眩しい...


さて、ロリンズ小説の魅力は、なんといっても、歴史と科学の狭間でもがき、事実とフィクションの狭間でもがき、想像力を掻き立てるところ。知的探求の場面で集中力を要請し、アクション場面で息抜きをさせてくれるのも、こいつの醍醐味!
そして、シグマフォース・シリーズに手を出すのは、これで七作目だ。このシリーズの邦訳版は、ゼロ番から数えるので六番目の作品ということになるが、とうに十番を通り過ぎ、まだまだ道のりは長い。そして、何のために?おいらの読書人生とは、いったいなんなんだ?こんな問い掛けにも挑発してきやがる。「答えを知りたいなら、読み続けることだ...」と。
しかし、もうリズムは分かっている。翻訳者桑田健氏のリズムも...


原題 "The Devil Colony"... これは、アメリカ建国にまつわる物語である。まず、重要なキーワードは三つ、「モルモン教」、「アメリカ先住民の白いインディアン」、「建国の父たち」。これに最先端科学「ナノテクノロジーの錬金術」が絡んだ時、「大いなる秘薬」とやらが浮かび上がる。
人間ってやつは、陰謀説に目がない。自然な成り行きですら、裏で糸を引く存在を想像せずにはいられない。神の仕業というだけでは満足できないのだ。推理小説ともなれば、深読みするは必定。
陰謀説で欠かせないキーワードといえば、ユダヤ、フリーメイソン、テンプル騎士団、グノーシス派といった秘密結社の類い。アメリカ建国の父たちにも、フリーメイソンを多く見かける。ベンジャミン・フランクリンやジョージ・ワシントンなど。トーマス・ジェファーソンもフリーメイソンだったかは定かでないが、なんらかの形で関わっていたのは確かなようである。
しかしながら、本物語では、これらのキーワードは補足的な役割でしかない。歴史には、光と闇が存在する。そして、闇は葬られてきた。それは、民主主義の源泉にまつわる何か...


1. 合衆国の国璽
アメリカ合衆国の国璽を眺めると、白頭鷲の頭には 13 個の星がダビデの星の形に並べられ、鷲の鉤爪にはオリーブの枝と 13 本の矢が握られている。オリーブの枝は平和への願い、13 本の矢は争いを束ねること。そして、鷲の頭はオリーブの方を向いている。建国時の植民地の数は 13 で、これらが団結して一つの国家を成すという意味だ。ただ、ユダヤを象徴するような絵柄。このことが、現在でもアメリカ政府がイスラエルに執着する理由と絡めて噂される。


2. 十三本の矢の逸話
十三本の矢が描かれる裏には、カナサテゴ族長にまつわる話がある。
ちなみに、日本の戦国武将毛利元就にも三本の矢の逸話があるが、スケールが違う。13 と 3 の違いも偶然とはいえ...
1744年、族長は入植者と会合を持ち、イロコイ連邦を事例に、国家を成すために一つにまとまる模範を示したそうな。この会合にはフランクリンも同席したらしい。そして、出席者たちが族長の言葉を伝えて、合衆国憲法を起草したとさ。
カナサテゴ族長は実在したイロコイ族の指導者で、彼を「幻の建国の父」と呼ぶ人も少なくない。イロコイ連邦の憲法が独立宣言をはじめとするアメリカ建国の文書に貢献したことは、1988年に可決された 331 号決議案で認められているそうな。そして、どこかで見たような文面が綴られる...
「我々人民は、連邦を形成し、平和と平等を樹立し...」
民主主義というイデオロギーの起源がインディアンにあるとすれば、西洋主義も色褪せる。近代民主主義の起源をアメリカ独立戦争やフランス革命とするのは、どうも薄っぺらだ。平和や自由にしても、基本的人権にしても、どこの地域にも見られる社会現象であり、なにも西洋文明の賜物というわけではあるまい。むしろ、人類普遍の価値観なのでは。
とはいえ、哲学的に用語を定義し、政治学という学問を広めた貢献は讃えたい...


3. 十四番目の支族とモルモン教
国立公文書館に残される図案には、14 本の矢がスケッチされているという。十四番目の植民地が存在したということか?それがなんらかの形で抹殺されたのか?
現代でも、古代の白色人種の遺体がアメリカ各地で発掘され、人類学者を困惑させているという。ケネウィック人、ネバダ州スピリット洞窟のミイラ、オレゴン州のプロスペクト人、アーリントン・スプリングスの人骨など。
モルモン教の聖典によると、アメリカ先住民の起源がイスラエルの失われた支族にあると記されているとか。DNA 鑑定でこの説は否定され、初期のアメリカ先住民はアジア起源とされているらしい。
ただ、先住民の言語では、ヘブライ語との共通点が多く見られるとか。ここでは「改良エジプト文字」という用語を持ち出す。それは、エジプト語の要素を取り入れたヘブライ語の進化形とされる。こうした文字が彫られた金の板が、アメリカ各地で発見されているという。
尚、1800年代半ば、モルモン教徒の開拓者と先住民との間に多くに軋轢が存在し、虐殺や戦争に発展した例も多くあり、現代でも、モルモン教に対する嫌悪が根深く残っているらしい。
歴史を振り返れば、国家統一のプロセスは茨の道に覆われている。反発した部族もあれば、犠牲になった部族もある。契約を結べば、契約反故もする。民主主義とは、部族間の同意の上で成り立つものだけに...
ジェファーソンは、メリウェザー・ルイスとルイス・クラークの二人をアメリカ大陸の探検に派遣している。その主目的が、先住民の監視であったことが、議会に宛てた秘密の書簡で明らかになっているという。それで、建国の父たちが、なぜイスラエルの失われた支族に執着していたのかは知らんが...


4. ナノテクノロジーの錬金術に守られた秘薬
錬金術に取り憑かれるのは、人間の欲望の顕れ。かのニュートンまでも。ナノテクノロジーをもってすれば、賢者の石が作れるのかは知らんが...
さて、本物語では、金で封印した「大いなる秘薬」ってやつが注目される。古代の人々は、不安定な物質を断熱するために金で覆い、さらにナノ状の金でできた地図を封印したらしい。ナノ状の金を溶かすには金を溶かすよりもはるかに高い温度が必要で、地図は確固たる場所に保管されていたわけだ。不安定な物質とは、ニュートリノであり、こいつが大量放出すると、地球規模の大爆発につながる。ある箇所に溜まった素粒子が活動を始めると、他の場所に溜まった素粒子の活動を誘発するというから、いわば、素粒子の連鎖反応による大量破壊兵器。その引き金となる秘薬の存在する場所が地図に記され、ナノテクノロジーの錬金術によって守られているという寸法よ。
シグマフォースの隊員たちは、この秘薬をめぐってテロ組織「ギルド」と戦うというお馴染みの展開。
ちなみに、ニュートリノの観測では、岐阜県に設置された「スーパーカミオカンデ」が、ひと役演じる。
ナノテクノロジーといえば、ナノマシン、ナノワイヤ、カーボンナノチューブといったものを思い浮かべる。現代の最先端技術として認識されているが、その起源を遡れば、中世の職人技術に見るばかりか、古代技術の痕跡にも発見されているという。アメリカ先住民の一部族は、けして入植者たちに知らしめてはならない技術を隠蔽していたというのか?建国の父たちは、その技術を欲して、14番目の属州に加えようとしたのか?


「科学は私の情熱であり、政治であり、義務である。」... トーマス・ジェファーソン

2021-09-26

自動車という概念が曖昧になっていく...

Crown Athlete から Crown RS Advance へ王冠の引継ぎを終えた... まではいいが、一通り使えるようにするのに半日がかり!
ドライブレコーダに、CarPlay に、クルージングに、インナーミラーに、パノラマビューに... 自動車という概念が曖昧になっていく。なぁ~に、心配はいらない。仮想化社会では、自由意志ですら曖昧なのだから...

1. いきなり、ドライブレコーダが作動しない!しかし、モノはまぁまぁ...
いきなり、クラウンファーストコールが繋がらなかったが、その呪いか?
モノは、Carmate d'Action 360S DC5001。相性のいい機種が分からなかったので、ディーラ任せ。30 分ほど悩んだ挙げ句、SD カードをフォーマットしたら、すんなり動いた。まさか、特殊フォーマット?いや、ごくたまにフォーマットをしくじって出荷されるメモリを見かけるが、その類いであろう。そういえば、フロッピーディスクの時代は、まずフォーマットするのが当たり前であった...
本体へのアクセスは、取説には、スマホで WiFi 経由か、本体を取り外してパソコンと USB で直接つなぐか、二つのパターンが記載されている。まさか!SD カードを引っこ抜いて直接パソコンで読めない?いや、普通に読める。なにが普通かは知らんが。しかも、.mov 形式のファイルで、メーカ提供の専用ソフトに頼るまでもない。ファイル構成も覗けば分かる。当たり前すぎて、取説に記載するまでもないってことか...
本体の設定にスマホを使うまではいいが、WiFi 転送に時間がかかるし、SD カードを持ち出して直接読む方が実用的だろう。
モノ自体は、なかなか。ドライブレコーダとしてだけでなく、アクションカメラや駐車監視機能もあって、しばらく遊べそう。ただ、標準で 32GB のメモリをつけてくれたが、ちと寂しい。128GB は欲しい...

2. うっかり通知メールでビックリ!
年寄りを乗せたままエアコンをつけっぱなしで薬局に立ち寄ると、「お車への操作忘れなどを検知いたしました!」というメールが送信されてきた。

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下記日時にお車への操作忘れなどを検知いたしました。
検知日時:2021/xx/xx xx:xx:xx
ナンバー *** * ****
クラウンの検知状態
 ドア:閉
◆ドアロック:アンロック
◆パワーウィンドウ:開
 ハザードランプ:消灯
 ヘッドランプ:消灯
 車幅灯:消灯
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スマホの「MyTOYOTA」アプリから通知設定ができ、セキュリティ状況がリアルタイムでモニタできる。但し、T-Connect との連携が必要。
モニタ項目は、こんな感じ...

  • 車の現在位置, 走行可能距離, ガソリン残量, 燃費, ドライブ診断
  • セキュリティ... ドアのロック, ドアの開閉状態, パワーウィンドウ, ハザードランプ, ヘッドランプ, 車幅灯, ボンネット(閉じてます), キー(車外にあります), オートアラーム(作動中), 侵入センサ(作動中)
  • ヘルスチェック... 警告灯, 電子キーの電池残量, エンジンオイルの量, ブレーキオイルの量
  • Toyota Safety Sence の状態... 自動ブレーキ, 車線はみ出し, 自動ハイビーム, 追従ドライブ支援機能

3. クラウンのナビシステムに、ようやく Apple CarPlay/Android Auto が搭載!
Athlete のナビシステムは時代遅れ感があったが、RS Advance はそうでもない。ディスプレイの横幅が広くなったのがいい。いや、Athlete の縦配置が、横配置になっただけか。左右の配置は入れ替えられるけど。どうせならマップなどを全面表示できるようにすればいいのに...
Toyota SmartDeviceLink も軽く試してみたが、うん~微妙...

さて、期待していた CarPlay だが、YouTube のような動画系アプリが対応していない。運転の支障になるからであろう。iPhone 側で YouTube を再生すれば音楽は聴けるけど、うん~...
実は、車内の音空間に YouTube の自動再生機能を期待していた。
ちなみに、関東地方には、J-WAVE という音楽垂れ流しの FM 局があり重宝した時代もあったが、九州にそんなものはない。
YouTube はというと、例えば、"you raise me up" といったキーワードで検索すれば、関連曲を勝手に垂れ流してくれるし、選曲の精度もまぁまぁ。今、ハマっているキーワードは、Celtic Woman に、The 12 Tenors に、The Piano Guys に... そして、Peter Bence & Peter Buka の魅惑的な着想に翻弄され、Simply Three にシンプルに生きようという意欲を掻き立てられ、裸足で熱唱する Adele に生きる力を注入され... こうした音空間はドライブ環境にもってこい!
尚、音楽以外のジャンルに興味はないし、広告は、AdBlock!

運転支援という観点から眺めると、画像系はやや縛られ感ありだが、自動運転レベルが上がれば、解消されていくだろう。
セキュリティ面やメンテナンスの側面から眺めると、拡張性を感じさせる。
しかし、なんでもスマホでコントロールできるという流れは、どうであろう。どちらがコントロールされているのやら?もはや、自動車という概念もぶっ飛びそう... 自動車免許証という概念も... 自動車メーカという概念も... そして、総合的な知識がなければ息苦しくなっていきそうな... サポートする側も、される側も...

2021-09-19

王冠の引継ぎ... 納車ルームで納車式!?

いつかはクラウン... と謳われた看板車も、あっという間に売れなくなったらしい。福岡ではよく見かけるけど...
SUV へ移行とも噂されるが、生産終了と聞けば、なんとなく縁を感じる。25年前になろうか、MR2 の生産終了が報じられてディーラに駆け込んだ記憶が蘇る。MR2 は名車であった。実に名車であった。


おいらは、クラウンに執着しているわけではない。そもそもセダンが好きなわけでもなく、介護用に妥協しているだけのこと。本当はロードスターが欲しいのだけど、そうもいかない。
ただ、この手の車で FR がなくなっていくのは、ちと寂しい。確かに、セダンに FR レイアウトは不向きかもしれん。プロペラシャフトがエンジンから後輪へ突き抜けるので、後部座席の中央部が盛り上がり、足元の空間を狭める。
だからといって、FF 化すればカムリとかぶる。レクサスとの共存も難しいのだろうが、おいらはデザインでクラウンを選ぶ。ブランド価値に興味はないし、庶民カーらしく割引の相談もしやすい。
とはいえ、アクアやらヤリスやら、似たような車種をたくさん生み出しているではないか。売れないからといってスポーツカーを作らなければ、真の車好きが離れていく。それで、86 の復活?いや、BRZ だ。
どうせ受注生産だし、生産効率性でそんなに足枷になるのだろうか。人気を博す必要があるとも思えんが、この多様化の時代に...


さて、レクサスには納車式なるものがあると聞く。庶民化したクラウンにそんなものはないが、付き合いの長いディーラが改装され、納車ルームなるものができたらしい。そこで、Crown Athlete から Crown RS Advance へ、王冠の引継ぎといこう。
ちなみに、Athlete は、購入した翌日に、年寄りがウンコ漏らし、新車の香りが台無しであった。後部座席の座り心地が、よほど良かったと見える。RS Advance は、皮シートでさらに心地よさそうなので、要警戒!



1. いきなり、呪われたか?
いきなり、クラウンファーストコールとやらが繋がらない。クラウンオーナーをお迎えするために何か喋ってくれるらしいが、接続をやり直してください!って。しかも、エンジンボタンを押す度にメッセージが表示され、鬱陶しい!
DCM で通信しているが、コールセンターが混んでいるのか?システムがダウンしているのか?どうでもええから、こいつを黙らせてくれぃ!
とりあえず持ち帰って、CarPlay やドライブレコーダなどを設定していると、夜七時頃、突然喋りだした。設定に夢中で何を喋ったかは、記憶にごじゃいましぇん!
それにしても、接続できないことを想定していない、実に気の利いた、実に余計な演出であった。営業マンとは、20年来の付き合いだが、二人して笑うしかない...


2. ネアンデルタール人には、他の車は運転できましぇん!
運転支援システムからの情報が多く、頭はすでに Kernel Panic !
ただ、人間ってやつは贅沢なもので、すぐに慣れちまい、逆に頼りきってしまう。もう、他の車は怖くて運転できそうにない。自動運転レベルが、3 以上にもなると、おそらく自動車という概念までもぶっ飛んでしまうのだろう。
しかし、人間ってやつは、危険を察知できるから進化してきたのであって、それがなくなると、どうなるのだろう。なぁ~に、心配はいらない。別の危険をこしらえ、新たなリスクを生み出すだけのこと...


・まず、サイドブレーキがない!
いや、あるにはあるのだけど、シフトレバーをパーキングに入れたら自動でかかる。シフトレバーの側に電子式ボタンがあって、手動でブレーキホールドができる。電動パーキングブレーキと呼ぶらしい。
ちなみに、ブレーキとアクセルを踏み間違えるといった事故をよく耳にするようになったが、人間工学的に左足の適切なポジションが右足の動きを先導するところがある。クラッチ操作が当たり前の時代に聞かれなかったのは、そのためかと。いや、間違ってアクセルを踏んでも、クラッチの保険付きだったという見方もできるか。
さらにちなみに、パソコンでキーボードの打ち間違いが多い時は姿勢が悪いせいで、けして、アルコールのせいではない!なので、オフィスチェアにバケットシートは理に適っていると思う...


・ヘッドアップ・ディスプレイは、もはやゲーム感覚!
フロントガラスに、速度計や車線からのはみ出し警告、さらに制限速度などの道路標識をカメラで認識して表示してくれる。慣れてくると、もっと派手なに情報が欲しくなり、コックピット気分を求めてしまう。


・デジタルインナーミラーは、ちょいと見え過ぎ感があり!
バックミラーに後方カメラの画像情報を表示し、明るさの調整もでき、後方視界が広がる。雨の日は、ちょいとカメラが曇る場合があるが、すぐに解消されるのは、曇り止めの機能でもあるのだろうか。ただ、後ろの車が近くに見えて、やや煽られ感あり。ズーム機能もあって一番遠くに設定しているが、それでも...
ちなみに、バックミラーは自動車の後方を見るためだけでなく、実は、後部座席の年寄りの状況を確認する意味もあったが、この際、年寄りから解放してくれる介護者支援機能としておこう...


・パノラマビューモニターは、下界を見下ろし気分!
周囲のカメラ画像を合成して、上空から自動車を見下ろした映像を作り出している。駐車場の停車位置や、レーンの左右どちらかに寄っているかなどの情報が役に立つ。
見通しの悪い交差点では、前方視界を広角に映し出し、恐る恐る頭を出しながら左右の安全確認をするといった手間がいらない。
ただ、オートモードにしていると、停車するたびに機能が作動し、信号待ちで前方画像に切り替わるのが鬱陶しい。


・パドルシフトは、いらないと思っていたが...
パドルシフトは、スポーツモード時しか作動しないと思っていたが、通常のドライブモードでも作動してくれる。オートマチック車で、ずっと気になっていたのがシフトダウンである。例えば、高速道路から降りてきた時にエンジンブレーキの効きが悪い。これを、手動でやれるのはありがたい。


・バック中に障害物を検知して勝手に停止する、まではいいが...
一旦、障害物を検知して停止すると、その解除に遅延がある場合がある。目視で安全確認し、さらにバックしようとするとアクセルが効かず、つい強く踏んでしまいそう。焦らず、ゆっくりやれば解除されるが、知らないと、これ以上バックできないと思い込んでしまう。
そういえば、時々スーパーの駐車場で頭を出したまま駐車している高級車を見かける。他の車がひっかけそうになったり、歩行者がぶつかりそうになったり。何かを検知して、これ以上バックできないと思って、そのまま放置しているのかもしれない。
ちなみに、自宅の駐車場でバックすると、よく人体を検知したと警告される。ちょいと伸びきった雑草にでも反応しているのか?誰もいないはずだが、いや、幽霊でも立っているのか。日本の幽霊は足がないと聞くが...


・やたらと警告音あり!オオカミ少年症候群になりそう...
BSM(ブラインド・スポット・モニタ)のような機能は、いまや当たり前のように付いている。そういえば、他の車でバックミラーにオレンジランプが点灯するのを見かけてはなんだろうと思っていたが、こいつかぁ...
慣れない警告音では、信号待ちで前の車に続いて停車していると、ナビ操作をしていたら先行車発進のお知らせアラームでドキッ!
レーンのはみ出し警告などでアラームが鳴るのはいいが、あまり多いのはどうであろう...


3. スマートキーに未だ違和感あり!
ずっと前から思っていることだが、おいらは、スマートキーに違和感をもつネアンデルタール人だ。
まず、せっかくロックしたのに、年寄りがドアノブを握って確認しようとする。キーを持っている運転手が近くにいると、解除されるっちゅうの...
同じ原理で、持ち主がロックして離れようとした時に、こっそり車の影から忍び寄ってドアノブを握れば... なんとも恐ろしい!
また、自宅の二階からスマートキーのロック解除ボタンを試しに押すと、ベランダから下を覗いたらロックが解除された。なんとも恐ろしい!
一昔前の感覚では、玄関先に車のキーを置く家をよく見かけたが、駐車場が近くにあると、キーの意味をなさない。
まさか!とは思うが、電波中継器を置くだけで買い物などで遠くに離れていたとしても、ロックが解除できたりして。電波ってやつは、その物理特性上、増幅器を噛ませば、いくらでも飛ばせる。地球の裏側だって。このデジタル時代に、そのぐらいのセキュリティ対策はやってくれているだろうけど、なんとも恐ろしい!
さすがに、スマートキーが車内にないとエンジンはかからないが、中継器をうまく設置して、電波を車内から飛ばしているように偽装することもできそうな。なんとも恐ろしい!
利便性ってやつは、構造的な仕組みを理解した上で利用しなければ仇となる、諸刃の剣か...

2021-09-12

自動車ナンバーは安全素数... 人生ロードは割り切れない!

希望ナンバー制度を利用して、名前の語呂合わせで番号を選んできた。それは、テトラクテュスにあやかった数で縁起がええ。
しかし、ちと目立つ。おいらは、人見知りの激しい恥ずかしがり屋なのだ。周りは信じてくれないけど。車の買い替えにあたり、ナンバーを変えることに...


では、どんな数にするか。ちょいと控え目でエレガントな数といえば、素数あたりはどうか。素数とは、自分自身以外の数では割れない数を言う。人生という長い道のりでは、割り切れない事ばかり。
そこで、暗号理論に「安全素数」という概念がある。安全運転に掛けて... ダジャレ癖は、もはや老害よ!


暗号アルゴリズムの基本的な考え方は、データを素数の積で表記して符号化する。それは、因数分解に用いる素数を見つけることが困難であることを利用している。素数が暗号キーになるという寸法よ。
例えば、インターネットで普及した RSA 暗号は、桁数の大きい合成数の素因数分解が困難であることを拠り所にしている。困難といっても、不可能ではない。桁数が大きいほど困難になるわけだが、RSA 暗号は時代とともに桁数を増やし、いまや 300 桁を超え、スーパーコンピュータでも解読に一億年かかるとも言われている。この安全神話も、量子コンピュータの登場で崩壊しつつあるけど...


素数が無限に存在することは、「ユークリッド原論」にエレガントな証明が記される。中でも、とびっきり解読が難しいとされるのが、「安全素数」ってヤツだ。それは、ある数 p と 2p + 1 が共に素数の時、2p + 1 を言う。ちなみに、p の方はソフィー・ジェルマン素数と呼ばれ、ガウスが数学の才に惚れ込んだとされる女性の名を掲げている。実際のところ何に惚れ込んだかは知らんが...
それはともかく、自動車ナンバーに登録できる数は、たかだか 4 桁。これを安全と呼ぶにはおこがましいけど...


さて、どの安全素数にするか。登録可能な選択肢は、115個もある。とびっきりのとびっきり、スーパー素数か。偉大な数学者にあやかってオイラー素数か。ガウスが惚れ込んだソフィーか。ハッピー数ってのもある。
いや、ここは人類の最も偉大な感性に委ねるとしよう。そう、気まぐれってやつに。安全素数に気まぐれを掛ければ、永遠に解読不可能となろう...

2021-09-05

"アート・オブ・アジャイルデベロップメント" James Shore, Shane Warden 著

オライリー君のシリーズで、つい手を出してしまうヤツがある。アート・シリーズがそれだ。技術に芸術を見、取り組みは泥臭くても成果物は美しくありたい。そんなことを、ぼんやりと考えながら...
しかし、芸術の道は険しい。芸術的に生きることは、さらに難しい...


さて、ソフトウェア開発でよく耳にする「アジャイル」という言葉。おいらは、こいつをマネジメント用語と解している。ソフトウェアに特化したものではなく、あらゆる開発現場で参考にできると。ちなみに、おいらはプログラマでもなければ、ソフトウェア業界の人間でもない。
アジャイルを実践する!と声高にアピールする人を見かけるが、本当に実践している人たちは、そのような用語をあまり使っていないように見える。自然体でいるような。オブジェクト指向という用語にも、似たような感覚が見て取れる。無意識に実践しているような。アジャイルチームの特徴は、自己組織性にあるという。自主的で自立的であれば、用語に振り回されることはないだろう。ましてや流行語に...


「『アジャイルになる』というのは何を意味するのか?この質問の答えは、思った以上に複雑だ。アジャイル開発は特定のプロセスに従えばよいというものではない。アジャイル手法を実践しているチームというものはない。そういうものじゃないんだ。アジャイル開発とは理念だ。ソフトウェア開発についての考え方なんだ。」


副題には、「組織を成功に導くエクストリームプログラミング」とある。ここでは、アジャイル開発における手法の一つとして、XP(エクストリームプログラミング)を中心の据えている。それは、短期間で頻繁にリリースすることを推奨するもので、具体的には、リファクタリング、コードレビュー、ペアプログラミングといった手法が紹介される。
ただ、新しい文化を取り入れるには時間がかかる。数ヶ月ぐらいの覚悟がいる。それでも取り入れる価値があるかどうか。プロマネは、いつもそんなことを考えながら仕事をしている。改善においては、貪欲でありたいと。その道のメンターがいるとありがたいが、現実には難しいので、自らメンターを演じようと...
そして、アジャイル文化は、極めて民主主義的で、自由精神の体現にも見えてくる。ファシズムの時代には、民主主義を統一を欠いた社会、自由精神を道徳の退廃と吹聴されたが、現在では民主主義が連呼される。価値観なんてものは、何を転機に逆転するか分からない。
チームの運営では、個性は統一を欠く要因とされがちだが、個性がチームとなった時の能力は計り知れない。なにより仕事をやっている連中が楽しんでやがる。マネジメントで深刻なのは、技術の問題よりも人間の問題だ。そのための第一目標は、やりがいのある仕事を提供すること、そしてプロマネ自身が楽しむこと、顧客も巻き込んで...


「変化が人を不快にするというのはまぎれもない事実だ。XP はチームにとって大きな変化だろう。もしこれまで融通の利かないドキュメント中心のプロセスを使っているなら、XP は形式的でなく、だらしなく見えるだろう。」


1. アジャイルマニフェスト... 価値と原則
アジャイルの価値は、4つ...

  • プロセスやツールよりも、人と人との交流を。
  • 包括的なドキュメントよりも、動作するソフトウェアを。
  • 契約上の交渉よりも、顧客との協調を。
  • 計画に従うよりも、変化への適応を。

これを支える原則は、ざっとこんな感じ...
  • 最優先事項は顧客を満足させること。
  • 実働可能なソフトウェアの納品を頻繁に行う。実働するソフトウェアこそが進捗状況の尺度。
  • 持続できるペースで開発する。
  • 高度な技術と優れた設計への配慮は、アジャイル性を高める。
  • シンプルさが肝心、やらなくていいことはしない。
  • 最高のアーキテクチャ、仕様要求、設計は自己管理能力のあるチームから生まれる。

マネジメント論で耳にタコができるほど聞かされるのが、最優先すべきは顧客の満足度!ここで言う顧客とは、依頼元である。つまり、スポンサー。
しかし、おいらは、顧客という言葉にしばしば疑問を抱く。顧客であるはずの依頼元が、本当の意味で要求を理解していないことがよくある。ユーザの立場になって逆提案をすれば、要求仕様は自分で書くことに。結局、顧客とは、エンドユーザか。それで依頼元を満足させられれば、同じことだけど。
そして、開発途上で状況が変われば、気も変わる。おいらは、仕様変更の生じない開発プロジェクトに出会ったことがない。アジャイルプロセスでは、変化に対応することで顧客の競争上の優位性を確保するという。
また、実働するソフトウェアを頻繁に提供するということは、必然的にテスト駆動開発(TDD)が重視される。そして、開発メンバーの意欲にも配慮したい。品質を落とすような命令は技術屋の気分を萎えさせる。技術的卓越は重要な動機だ。たゆまぬ鍛錬こそが、道を極めるということを...


2. ドキュメント主義からの脱皮
ドキュメントが重要であるという価値観は、今も変わらない。おいらはネアンデルタール人なのだ。
しかし、だ。ドキュメントは、常に最新版に保守されていなければ使い物にならない。それには手間もかかる。それでも、必要ならやるべき。そこで、本当に必要なドキュメントとは何か?これをずっと問い続けてきた。ドキュメント化することで効率化を図れる部分もあれば、無駄を助長する部分もある。
近年のプログラミング言語は、アセンブラ言語の時代とは違い、コードを見れば何をやっているか、何をやるべきかが分かる。うまく構造化され、綺麗なコードであれば。コードの変更にドキュメントの変更が引きずられるなら、何をやっているのやら。一対一で完全に対応している保証は、どこにもない。ドキュメントが仕様の神様にならなければ、悪魔になるだけのこと...


「ドキュメントという言葉にはいろいろな意味がある。エンドユーザ向けに書かれたマニュアルや、詳細な仕様書、APIとその使い方の説明書を意味することもある。いずれによせ、これらはすべて、コミュニケーションの一つの形だ。それが共通点だ... ドキュメントの量を減らすのにリスクは、もちろんある。ドキュメントを減らすためには、別の形のコミュニケーションに置き換える必要がある。それこそ XP がやっているこなんだ。」

2021-08-29

"KVM 徹底入門" 平初, 森若和雄, 鶴野龍一郎, まえだこうへい 著

KVM(Kernel-base Virtual Machine)とは、文字通り仮想マシンモニタを提供するツールで、物理マシンをハイパーバイザーにすることができる。
その特徴は、Linux のカーネルモジュールとして実装され、x86 系 CPU に搭載される仮想化支援機能(Intel VT や AMD-V)を介してオーバヘッドを軽減する。お馴染みのパッケージ管理コマンド yum で拾えるのもありがたい。
ここでは、コマンドラインユーティリティとして qemu-kvm パッケージが紹介され、QEMU にぶら下がる形が見て取れる。実際、KVM の利用には、QEMU の導入が前提されている。


QEMU といえば、ハードウェアをエミュレートする場面で重宝している。例えば、設計対象となる組込システムでは ARM アーキテクチャによく出くわし、これの動作確認のためのプログラム作成など、いわゆるクロス環境として。CPU だけでなく、USB コントローラや SCSI コントローラなどの周辺回路をエミュレートする場面でも利用している。
ちなみに、つい最近、OS 制作のセミナーでも見かけた。自作 OS を試す場面でも活用でき、これを学生と一緒になってやるのは楽しい。実に楽しい...
QEMUは、ホスト OS に対してゲスト OS を配置し、アプリケーション風に動作させられるところが手軽でいい。ただ、完全にソフトウェアで制御するため、お世辞にも高速とは言えない。ARM 環境を動かすとなると、ある程度の高性能マシンでないと辛い。特に、出先で非力なノート PC でやるには...


近年、CPU に限らず、ハードウェア・アクセラレーションを利用できる GPU も目立つ。逆に、CPU の負担を軽くしようとして GPU の負担が重くなり、表示パフォーマンスが低下したりと、その按配が微妙だったりするけど。
いずれにせよ、ソフトウェアのパフォーマンスを上げるために、ハードウェアで支援するやり方は古くからある。暗号化といった大量な演算を要するチップなど。
とはいえ、おいらの場合、仮想化のための支援回路となると、いまいちイメージできていない。おまけに、使っている対象が物理的にイメージできないと、不安に襲われる性分ときた。そこで、KVM ってヤツはどうなんだろう... というわけである。


本書は、Fedora と Ubuntu への導入事例として書かれているが、両 OS のインストール手順まで掲載される。ここまでやらんでも。なるほど、徹底入門だ!
導入部では、GUI 環境を提供する virt-manager と、コマンドシェル virsh が紹介され、コマンドリファレンスも付録される。
興味深い話題は、KVM のリソース管理機能である。動作モニタのプロセスは、物理的なイメージがしやすい。核となるモジュールは、仮想マシン制御用の抽象化ライブラリ libvirt と、そのデーモン libvirtd。そう、Xen や VMware Workstation などの導入でも見かけるやつだ。こいつを手なづけるには、ライブラリが提供する API 群をいかに使いこなすか、にかかっている...
KVM のライブマイグレーション機能も興味深い。マイグレーションとは、ホスト OS で稼働中の仮想マシンを別のホスト OS に移行させることだが、その際、サービスやサーバを停止せずに移行させるのがライブマイグレーションってやつ。まさに、Linux カーネルらしい仕掛けである...


ところで、仮想化とはなんであろう。その目的とはなんであろう。少なくとも、貧弱なリソースが豊富になった気分にさせてくれる。物の価値を代替するお金も物量の仮想化であり、貧しい心を豊かになった気分にさせてくれる。仮想化とは、価値の代替か?気分の問題か?いや、それだけではあるまい。
実体がなければ、想像は無限に膨らむし、想像力そのものが仮想化のプロセス。精神という得体の知れない実体は、仮想空間とすこぶる相性がよく、精神そのものが仮想的な存在と言えよう。人間社会とは、まさに仮想社会における生存競争の世界だ。集団は実体のない情報に振り回され、いつも右往左往。精神が仮想的な存在だとすれば、仮想化によって人間は人間を取り戻しているだろうか?仮想化によって、自らの思考回路を活性化させているだろうか?仮想化によって、合理的に生きているだろうか?
コンピューティングにおける仮想化は、想像力を膨らまし、思考アルゴリズムを豊かにする、実に素晴らしい概念だ。しかしながら、仮想化技術もまた他の技術と同様、コモディティ化の流れに飲み込まれていく。どんなに優れた概念を編み出したところで、その概念の奴隷にならず、自分らしく生きることは難しい...

2021-08-22

"宇宙をプログラムする宇宙" Seth Lloyd 著

宇宙を論じる場では、古くから重力が主役を演じてきたが、E=mc2 の呪文とともに、エネルギーが主役に躍り出た。ここでは、エネルギーと肩を並べるように情報が主役を演じて魅せる。
it is bit... それはビットから... IT や ICT もビットから...
ここで、ジョークを一つ。但し、数字は二進数表記。
「10種類の人間がいる。ニ進数を知る人間と、知らない人間だ。」


宇宙とは何か?宇宙は何のために存在するのか?量子コンピュータ研究の第一人者セス・ロイドが熱く語ってくれる。それは、計算をするためだと。では、何を計算しているのか?それは宇宙そのもの、すなわち、自分自身の振る舞いを。量子情報理論によると、宇宙とは巨大な量子コンピュータであり、宇宙は自らを計算によって作り出しているという。それは、自己増殖システムか。自己言及によって進化していく様に、不完全性定理や不確定性原理との相性が見て取れる。チューリングが唱えた計算不可能性にしても自己言及に発する。人間が進化してきたのは、自己言及の名手だからこそ。進化とは、複雑化し、カオス化していくことなのか...
尚、水谷淳訳版(ハヤカワ・ポピュラー・サイエンス)を手に取る。


宇宙という巨大な世界を知ろうとすれば、量子という微小な世界を探ろうとする。木を見て森を見ず... という皮肉めいた格言があるが、森を見て木を見ず... では同じこと。
とはいえ、量子の世界は狂ってやがる。猫が生きていて、かつ死んでいる、といった荒唐無稽なことが理屈の上で起こっちまう。宇宙には悪魔が棲みついているのか。マクスウェルの悪魔にせよ、ラプラスの悪魔にせよ、超現象はすべて悪魔のしわざか?


昔から神のように崇められる物理法則に、エネルギー保存則ってやつがある。宇宙の誕生がビッグバンにあるとすれば、無から生じたことになるが、それで何が保存されているというのか。誕生する前からなんらかの情報が浮遊していて、その情報がエネルギーを持っていたとでもいうのか。宇宙で生じる物理現象は、あらかじめ仕込まれた情報によって、突然、露わになるものなのか。
うん~... そもそも、情報ってなんだ???
例えば、有名な二重スリット実験では、電子を1個発射させると、それぞれのスリットに同じ干渉縞が生じる。これが波動性ってやつだが、電子が粒子ならば、二つのスリットを同時に通り抜けるはずがない。これも悪魔のしわざか?
量子力学には、干渉性の消失という概念がある。デコヒーレンスと呼ばれるヤツだ。それは、周囲の環境が量子系の情報を得ることで、波動性を壊すプロセスにも見える。情報を抜き取ることによって、片方のスリットに存在する電子を無にできるというのか?
まったく、情報に操られた現象は悪魔じみている。なるほど、人間社会に蔓延る情報は、人間を動かすエネルギーを持っている。どうりで、人間は悪魔じみている...


1. 計算とは何か
宇宙が、自らの振る舞いを計算しているとしたら、その住民も計算しながら生きているということか。ただ、自己言及プロセスは、自分が何を計算しているかを認知できないことにある。人間だって、なんらかの損得勘定や見返りを計算しながら生きている、ってところまでは認知できるが、それ以上のこととなると、形而上学に放り込まれる。
宇宙が、量子の集合体で構成される巨大な量子コンピュータだとすれば、人間の脳だって量子の塊であり、ある種の量子コンピュータと言えよう。量子数の規模を比べると、人間に意思があるぐらいだから、宇宙には、もっと、ずっと高尚な意思があっても不思議はない。
計算とは、意思のことなのか?単純な法則が複雑系へ向かうのは、何らかの意思が働いているということなのか?計算するとは、なんらかの情報を元に量子が運動するということなのか?
ならば、情報とは過去ということになる。計算を重ねていくうちに、そのプロセスのすべてが情報となる。最初は単純な情報でも、過去の蓄積がカオスへ向かわせる。熱力学の第二法則は告げている。エントロピーはただ増大すると。宇宙はエントロピーに引きずられて膨張し、人間は過去に引きずられて生きていくわけよ...


2. 情報の本質と二進数
情報の最小単位はビットで表され、0 か 1 の状態をとる。計算の基本原理は、この状態を保持するか、反転させるか。つまり、すべては二進数で事足りる。十進数で計算するのは人間の都合であって、両手合わせて十本の指がそうさせるのかは知らん。
実際、コンピュータの演算回路は、2 の冪乗で構成される。足し算して桁上りするかしないかは、0 か 1 で示され、人生の分岐点で、進学するか就職するかも、0 か 1 で記述できる。選択肢が複数ある場合は、二択の多重化と捉えれば同じこと。
つまり、コンピュータプログラムの基本構造は、順次処理と分岐処理が主体となる。情報理論の父と呼ばれるシャノンが提示した 2 を底とする対数で記述される定理は、なかなか意味深い。情報と計算の両方の本質を暴いて魅せたのだから...


3. 量子ビットと多宇宙
量子コンピュータが扱うビットは、従来のビットとは、モノが違う。量子ビット(Qubit)と呼ばれるやつだ。
従来のビットは、例えば、トランジスタが保持する一つの状態で、0 か 1 をとる。これを変化させるには、ベース電圧やゲート電圧を制御して、スイッチングさせる。
一方、量子ビットは、光子、電子、クォーク、ニュートリノといった素粒子が持つスピンの状態で、それぞれの相互作用によって、スピンの方向を変えて情報を処理する。これを変化させるには、単に光をあてたりする。つまり、ビットの処理速度は光速なみに高速というわけだ。一般相対性理論によると、これ以上の反応速度はない。
しかも、スピンは別の状態を同時に持つことができる。こうした特性は、超高速な多重並列処理の可能性を匂わせる。まさに夢の演算素子というわけだ。膨大な計算量を要する因数分解だって、状態を分割して同時に計算すれば、暗号解読もお茶の子さいさい。猫が生きている状態と、死んでいる状態の両方を同時にシミュレーションすることだって...
そして、宇宙はユニバースからマルチバースへ。もはや、自分探しの旅なんてやってる場合じゃない。多宇宙で生きている別の自分を探さねば、いや、お前はすでに死んでいる...


4. ランダム性と有効複雑性
計算された結果は、消去されるか、後の計算のためにフィードバックされるか、それが情報の運命。計算や分岐の積み重ねによって世界が成り立っているとしたら、今の世界は確率によって決定されたとも言えよう。サルがタイプした文字列と人間がタイプした文章の違いは何であろう。サルがタイプした文字列が、詩になる確率は?途方もなく小さな確率であろうが、ゼロとは言えまい。しかし、人類という知的生命体が誕生した確率だって似たようなもの。
ただ、この広大な宇宙空間に地球外生命体が存在するかどうか、しかも、それが知的生命体である確率は?と問えば、かなり高そうな気がする。互いの知的生命体が接触する可能性となると、途方もなく小さな確率になるかもしれんが...
物質の存在や存在の仕方を問えば、ランダム性という概念に遭遇する。ランダム性は複雑系とすこぶる相性がいい。宇宙における計算や分岐の方向は、ランダムに行われているのだろうか?それとも、なんらかの意思が働いているのだろうか?
そもそも、ランダムってなんだ?完全なランダムって、どんなランダム?なんらかの法則でランダムが記述できるとすれば、それはランダムなのか?
宇宙空間に存在する物質は一様に分布していない。銀河団のような塊が点在する。しかも、それぞれの重力法則に従って形を整えている。ランダムってやつは無秩序なのか?それとも、弱い秩序があるのか?
そこで、「有効複雑性」という概念が飛び出す。有効な複雑ってなんだ?手に負える程度に複雑ってことか?人間社会を機能させるのに、完全なランダムは必要ない。ランダムっぽく見えるだけで、かなり役に立つ。その意味では、極めて主観的である。客観性を重んじる数学が、主観確率と同居できるのも頷ける。
その証拠に、デジタルシステムの検証の場で、疑似ランダム生成器が幅を利かせている。それは、軽い秩序か?人生のコントロールには軽いアンダーステアがいい...
それにしても、確率には救われるよ。こんな天の邪鬼な性格も、どんな現象も確率のせいにすればいい。神はサイコロを振らない!と豪語した大科学者がいたが、神ほどのギャンブル好きも知らんよ...

2021-08-15

"新・数学の学び方" 小平邦彦 編

数学は楽しい!おいらは数学の落ちこぼれ。でも楽しい!
酒を酌み交わしながらオイラーの公式について語り始めると、つい夜を明かしちまう。数学ってやつは厳密に理解しようとすると、これほど難解な学問もないが、分かった気になる分にはそれほど難しくはない。
いま、顔を合わせるたびに、けしかけてくる大学の先生がいる。薄っすらと笑みを浮かべ、これを読んでみろ!あれを読んでみろ!と、チェシャ猫のごとく。専門家がド素人を論理でねじ伏せようってかぁ...
いや、数学ってやつは、感覚やイメージで嗜むものらしい。五感を総動員して、絵画や音楽を嗜むように。数学が他のどの分野よりも厳密な論理で組み立てられているのは確かだ。しかし、それだけでは味気ない。
そういえば、ルイス・キャロルも数学の先生だっけ。少女に子供心をいつまでも忘れぬようにと書いた物語が、あの「不思議の国のアリス」。だから、薄っすら笑みを?気色わるぅ...


ここでは、13人もの先生方が数学の具体的な事例を用いながら、その学び方を伝授してくれる。寄稿者の面々は、小平邦彦、深谷賢治、斎藤毅、河東泰之、宮岡洋一、小林俊行、小松彦三郎、飯高茂、岩堀長慶、田村一郎、服部晶夫、河田敬義、藤田宏。
学び方は、十人十色!数学の先生方も一つしかない表記法に対して、実に多様な考え方や理解の仕方を提示してくれる。数学は、けして無味乾燥な学問ではないってことを。
ただ、13人もの御歴々が一斉に語り始めると、話題が豊富すぎてゲロを吐きそう。ざっと拾ってみても、πが無理数であることの証明に始まり、代数幾何学、コホモロジー、微分方程式、複素関数論、微分位相幾何学,.. さらにはガウスの楕円関数論まで飛び出す。帰納的な思考を語るには、やはりガウスは欠かせない。
数学者らしからぬ、暗記を勧める先生までもいる。理解が暗記の対極のように考えられがちだが、そう単純ではないようである。どうしても理解できなければ、暗記でも何でもやってみるさ。フランシス・ベーコンとソクラテスの言葉を掛けて、疑問のあり方を問い掛ける先生もいる。
「知は力なり vs 無知の知 vs 疑問を育てる」
疑問は言語化を育てる。正しく問わなければ、正しく答えられない...


学ぶとは、どういうことであろう... 理解するとは、どういうことであろう...
本書を読んでいると、そんなことを考えてしまう。人は何かを手本にしながら、考え方のヒントを得る。幼児が大人の真似をして、繰り返し片言を喋ることによって言葉を憶えるように。ダ・ヴィンチも、ミケランジェロも、ラファエロも、古代芸術を模写しながら独創性を磨いた。けして目先の技法に囚われず、猿真似で終わらぬよう。独創性とは、模倣の先に見えてくるものやもしれん...
「'学ぶ' は 'まねぶ' であって、その第一義は 'まねること' である。」


しかしながら、ド素人が専門家の学び方を真似ても、うまくはいかない。もともと数学のセンスがあるから、この道を選んだのであろうし、数学に対する姿勢も違えば、遊び心の奥行きも違う。
とはいえ、真似てみる以外に何ができよう。数学のセンスがなくても、我武者羅にやっているうちに、突然視界が開けることだってある。理解するまでのプロセスこそが数学の醍醐味!とすれば、落ちこぼれも少しは救われる。自分の思考回路は自分にしか分からない。理解するまでの道筋は自分で見つけ出すしかない。おいらには、自分の思考回路もよう分からんけど。ユークリッドの言葉に「幾何学に王道なし!」というのがあるが、ここでは「数学に王道なし!」と励ましてくれる...


ところで、本書の代表を務める小平先生といえば、日本人初のフィールズ賞を受賞した大先生だが、フィールズ賞といえば、昔から違和感を持っていることがある。それは、40歳の年齢制限があること。頭が柔軟でなければ数学で功績を上げることは難しいということだが、だからといって絶対的な年齢で規定するとは。柔軟性を重んじる数学が、実にらしくない。健康寿命が伸びている現代社会では、尚更。
但し、何を学ぶにせよ、子供心をいつまでも忘れぬよう心がけたい。アリスのように...
「数学の持つ鋭い魅力は人に伝えようとしてできるものではない。数学は面白いから面白いのであって、説明する必要など少しもないのである。数学の魅力を伝えようとしていかに数学が世に役立っているかを力説してみても、それではちっとも面白さが分からない。むしろ苦しみが増してしまう...」


たいていの人は、銭勘定に必要な加減乗除を知っていれば十分だと考えるだろう。だが、無味乾燥と酷評される数学が、人間社会でいかに重要な役割を果たしていることか。市場経済は、微分方程式なしでは立ちゆかない。保険会社や金融機関は、数理統計学なしでは立ちゆかない。個人情報を保護する暗号システムは、素因数分解なしでは成り立たない。通信経路やデータ記憶装置では誤り訂正率が問われ、製造ラインでは歩留まりが問われる。心理学や生物学にしても遺伝子工学と結びき、その根底にある量子力学、電磁気学、熱力学といった物理数学は避けられない。最大多数の最大幸福といった政治スローガンまでも確率論に支えられ、いまや数学と無縁でいられる分野を探す方が難しい。物事を観察する上で、数学は実に多様な道具になりうるだけに、それぞれの部門に適合した数学的思考を学ぶだけでも、視野が広がる...


そういえば、おいらにだって、数学が得意だ!と言い張っていた時代があった。定理や証明なんてものは憶えるものではない!必要ならその場で導いてやるさ!などと豪語していた。なので試験では、いつも時間をめいいっぱい使う。高校数学で登場する因数分解は、せいぜい四次方程式まで。これを解くのに法則めいたものはない。ただ数字を感じ取ること。大学の初等教育で、いきなり奈落の底に突き落とされたε-δ論法なんて、丸暗記してどうなるというのよ。素朴な精神をエラトステネスの篩にでもかけようってかぁ...
人生は短い!点数競争なんぞに付き合っている時間はない。なぁ~に... 落ちこぼれの遠吠えよ!
そして、数学から逃れるように工学の道へ進んだのだった。しかし、微分方程式からは、いまだ逃れられずにいる。それでも、解析学で重要な複素数や三角関数の恩恵を知って拒否反応も薄れている。フーリエ変換の凄みを実感しながら、テイラー展開や無限級数の有難味を感じ、πの偉大さを感じつつ。
πが無理数だと知っていても、どんな風に無理数なのかは知らん。知っていることといえば、数直線上で単位円を 0 から一周させると、3 を少し超えるあたりで止まるってことぐらい。πの無理性は、無限級数の親戚の連分数で記述することができる。無限級数ってやつは、近似する上で実に便利な道具だ。求める精度に対して、必要なだけ項数をとればいいのだから。
デジタル社会が論理数学で成り立っているのは確かだけど、それほど厳密とは言えず、そのほとんどが近似法で成り立っている。人間社会で繰り広げられる物理現象は、そのほとんどが連続性に見舞われており、連続的な物理現象をモデル化するのに、微分方程式ほどうってつけの道具はない。幾何学的なアプローチで、漸近線の有難味も合わせて。金融危機や自然災害の類いで不連続なケースもあるけど、境界面を微分方程式でつなぎ合わせていかに実世界に近づけるか。これぞ、微分方程式の役割だと解して励んでいるのだけど、やはり落ちこぼれは落ちこぼれ...